アクアリウム 公演情報 DULL-COLORED POP「アクアリウム」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    観ればみるほど・・・
    初日、23日のソワレ、そして大楽と3回観てしまいました。

    で、作品の印象が毎回違っていた。
    もちろん、ゲストパフォーマーの色の異なりもあるのですが、
    それだけに留まらない、舞台というか空間を
    幾度も見つめさせる力がこの作品にはありました。

    ネタバレBOX

    前説で主宰をして「芝居が古い」と言わしめたシーンから、
    すっと舞台上の時間に導かれ
    ゆっくりとその雰囲気に染められて見入る。

    わにがしゃべったり、ひよこがケンタッキーフライドチキンに抗議したりと
    いろいろあったりもするのですが、
    そこは心にとどめつつも、
    少しずつ解かれていく場の空気を見つめます。

    最初は目についていた舞台の中央前方に置かれている熱帯魚の水槽も
    やがて気にならなくなり、代わりに人物其々のことが
    少しずつ心に留まって、やがて、それぞれの今と、今の重なりと、
    その先に垣間見える、
    歩み出せないことと、
    歩み出してしまいそうななにかが、
    次第に舞台を満たしていく。

    やがて舞台は、正面の水槽の魚たちの世界と重ねあわされて、
    与えられるほんの少しの餌に保たれる、
    世界の巡りのバランスのリアリティと
    その中の魚たちのごとくに時を過ごす
    シェアハウスの住人たちの、あるいは今を生きるとある世代のありようとなり
    その感覚にすっかりと取り込まれている。
    そして、その世代が背負うものの奥に潜む、ゲストが演じるひとりの少年のありようも強く残りつつ、その世界に組み入れられて。

    初日の終演直後には少々ばらけた印象が残りました。
    しかし、一晩たつと、それらの印象が束ねられ、もう一度観たいと強く思った。
    そして、2度目に足を運ンだ時には、
    耳かきひとさじの餌を与える女性の
    「いつまでも見飽きない」という台詞の如く、
    その水槽の在り様が、よしんば古風な演劇の部分であっても、
    シュークリームを投げ合う姿であっても、
    嚥下できないものを無理やり口に運び吐き出す姿であっても、
    キャラクターたちそれぞれから描き出されるものも、
    あるいは様々な感覚の具象や、
    比喩に込められたものも、
    さらにはその奥に揺蕩うあの事件のことも
    すべてが水槽の世界にとりこまれ、
    水槽の同じ世界に初日とは異なる印象を醸し
    更にもう一度観たいと思ってしまう。

    3週間以上のロングランであったにも関わらず、
    前半、中盤、東京大楽とそれぞれに
    役者たちが常に新たな踏み出しで刹那を作り、
    醸されるニュアンスを定番に感じさせることなく
    舞台の空気を編み上げていて。
    ゲストが描き出す少年のニュアンスにも、
    其々の研ぎ方と表現の秀逸があって。
    単に物語を追うということではなく、
    物語から浮かび上がる魚たちの姿を眺めるような感覚にも
    深く捉われてしまったことでした。

    この作品、地方公演の、少々異なる水槽の中で
    どのように歩んでいくのだろうか・・・。
    かなわぬこととはいえ、東京楽日を観て、
    その先の公演がどのような質感を醸し出すのか・・・。
    気になる。


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    2014/01/05 20:14

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