〈自滅する帝国〉をアングラ感たっぷりに描く
明治の浅草周辺を訪れると、こんな無秩序な世界が拡がっていたのだろう。
白化粧を塗りたくった人々が、「バーチャルアイドルという群像」に惑わされ、追いかける物語である。死生観といい、極めて日本的ながら、〈奇抜〉を貫く。むしろ、そうした目を覆い隠す作品であることに誇りを持っているようにも感じる。
大音量のスピーカーを使い、音楽フェス会場のごとく観客の耳を痛めつける。マイクを握った“兄”は、「しらざあ、いって、きかせやしょう」を連呼するが、その台詞も日本なのだ。
そういえば、〈奇抜〉を主張すればするほど、エロチシズムとは無関係だから、若さを醸す。〈帝国〉の偶像性とバーチャルアイドルの偶像性をリンクさせたのは新しい。
この劇団、サークル色を脱し、より〈奇抜〉を強化すれば、観たい!観客は増えるのではないか。そこで大切なことは、もっと巧みかつ壮大でいて、共鳴できるストーリーだ。
この、「共鳴できた方がよい」とは 何のことを指すのかというと、近未来設定にリアリズムが足りなかった序盤である。将軍らしき人物が高らかな演説をするが、〈帝国〉の権威のみに基づき近未来を語るのも限界だろう。設定から観客を引き寄せれば、もっと終末論に集中できたはず。