プラトニック・ギャグ 公演情報 INUTOKUSHI「プラトニック・ギャグ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★

    ラストの展開に震えが走る
    「コメディ」と銘打たれていたけど、実際はかなりビターな
    物語かと思います。「プラトニック・ギャグ」の意味も辛い。
    とりあえず、ラストの展開は衝撃的で、いきなり別の作品
    観ているような気分に陥りました。

    ネタバレBOX

    明らかにファンタジーの世界の学校に通うノアとナギが
    出会って、恋に落ちて、修学旅行などのイベントごとで
    まわりの邪魔が入りつつもお互いの距離を縮め合うサイド、

    子どもの頃からいつも一緒にいた4人組が、成長するに
    したがって、ある人はいい仕事先に恵まれ、そして海外で
    NPOに従事する意識の高い人物になり、

    紅一点の人は、中学の頃から意識していたガキ大将的な
    立場にいた子と付き合うようになり、やがて結婚を意識する
    ようになる…と、よくありがちな流れが描かれるサイドの二通りが
    暗転とともに、順番に説明されていくのが、今回の作品。

    劇場で爆笑していた人には申し訳ないと思いますが、ギャグは
    あまり刺さってこなかったです。ちょっとハイテンション過ぎて
    おいてけぼりをくらった感じかな。

    「コメディ作品」を期待して観ていた自分としては、ちょっと…と
    思っていたんです。途中までは。

    やがて、物語の2つのサイドのうち、ファンタジー世界の方は
    もう片方の「現実」のパートで、いつもハイテンションでズレた
    発言を繰り返す、他人とのコミュニケーションにかなり難のある
    最後の一人、トウジの頭の中で繰り広げられる妄想だということが
    分かります。

    4人の中で、その人だけ、素っ頓狂な言動で道化役のような
    立場になってしまっていて、他の3人がそれぞれの未来や
    幸せをつかんでいくのを目の当たりにしながら、やるせない
    気持ち、そして心の中の闇を深めていく…。

    ファンタジー世界で、ノアとナギ、二人の距離が縮まらないように
    いいタイミングで邪魔が入るのも、その世界の「神」であるトウジが
    そう望んでいたから。でも、その制約を破って、ついに二人は
    クリスマスの日、結ばれたカップルは永遠の幸せを叶えられる日に
    お互いの気持ちを告白しようという流れになります。

    現実では友人たちに取り残され、自身が王であるはずの
    ファンタジーの世界でも思うようにならないことに精神の
    均衡を崩し始めたトウジ。さて、クリスマスの日に何をしたでしょうか。

    ファンタジーの世界に入り込んで、最初の一声を上げようとした
    ノアを刺殺します。そして、ナギを抱きしめて、こう言うんです、
    こう繰り返し続けるんです。「行かないで。ここにいて」。

    最初と終幕の温度差があまりに違うので、本当に別の作品かと
    思うほどでした。でも、ここまで、人間の心の闇を描いた作品、
    しかもコメディ仕立てで、となると、本当に久しぶりな気がします。

    多分、自身の分身であるノアとナギがくっつきそうになるのって
    心のどこかでトウジ自身が望んでいたと思うんですよ。誰か
    自分の理解者が現れて、自分を救ってくれる、愛してくれる。

    自分の心の中のある部分を手にかけたことで、トウジの心の
    闇は完成してしまって、それって本当に恐ろしいことだな、と
    思いましたね。

    この劇団には、シリアス風味の、非コメディ作品を望みたい
    ところですね。なんか、その方がいい気もします。

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    2013/12/30 18:29

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