RASCAL 第1回公演 『カミノキズ』 公演情報 RASCAL「RASCAL 第1回公演 『カミノキズ』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    人生をさぼる人々
    傷ついてどうすればいいのかわからない、これ以上傷つくのが怖い、
    そう思った時、男はひきこもり、仲間を誘い、優しいシェルターを作った。
    役者陣は魅力的だしシチュエーションも面白い。
    だがちょっと丁寧過ぎたせいかテンポが悪く、集中力が途切れそうになるのが残念。

    ネタバレBOX

    開演直前、ひとりの男が登場して床に座りノートパソコンを打ち始めた。
    段ボールが積み上げられ、黒いボックスが雑然と置かれた部屋は倉庫のよう。
    ここは自殺した恋人の荷物が保管されているトランクルームの一室。
    傷心の箱崎(工藤優太)は中身を見る勇気も無く、
    ただ毎日パソコンでちまちま仕事しながらここに住んでいる。
    そしてやはり仕事の無い入江(永井佑昌)と谷川(長谷川綾祐)も一緒だ。
    3人の暮らしはぐだぐだと快適そうだが、次々と訪れる人々によって波風が立ち始める。
    自殺した彼女も含めて4人の高校時代の恩師や、バイトを紹介してくれる後輩、
    その後輩の彼女らしき女の子、そして死んだ彼女の親友だった山際(篠原友紀)など。
    そして執拗に箱崎を問い詰める山際が、ある事実を突き付ける…。

    仕事も金も無い3人が困ったね、と言いながら肩寄せ合ってトランクルームで暮らす、
    という予想は早々に崩れる。
    表面上はことさら軽いノリで流しているように見えて
    実は入江と谷川が、まるで壊れ物でも扱うかのように箱崎を守ろうとしている。
    それが箱崎の危うさを想像させて、ちょっとはらはらする。

    入江役の永井佑昌さんと谷川役の長谷川綾祐さんが素晴らしい。
    個性の違いが言動に良く表れていて、キャラにはまった台詞が生き生きしている。
    ヤワな男を外敵から守り、立ち直るまでもう少し見守りたいという優しさが伝わってくる。

    個々の人物像は個性があって面白いし、台詞もリズムが感じられてとても良いと思う。
    ただ大きな流れで見ると、もう少しテンポ良く運んでも良いような気がする。
    例えば意を決して箱崎が段ボール箱を開けるシーンなど
    タメが長くて集中力が途切れそうになるのが惜しい。

    それから煙草のシーン、この頃では前説で
    「喫煙シーンがありますが、無害の煙草ですのでご安心ください」などと言うことが多い。
    火をつける仕草だけで煙を出さない演技もある。
    あれは本物の煙草だろうか?
    ちょっと煙が気になった。

    非日常的な空間の中で、誰もが持つ弱さと身勝手な解釈が浮び上る構図が面白い。
    劇中「ここで人生をさぼってる」という言い方をしていたが
    人にはそんな時期があってもいいんだなと思った。
    希望と安堵のラストが好き。
    私も何となくほっとして帰ったのだった。


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    2013/12/28 03:05

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