平成25年12月歌舞伎公演「主税と右衛門七」「弥作の鎌腹」「忠臣蔵形容画合」 公演情報 国立劇場「平成25年12月歌舞伎公演「主税と右衛門七」「弥作の鎌腹」「忠臣蔵形容画合」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    バラエティ豊かで楽しめた外伝
    歌舞伎座の本家「仮名手本忠臣蔵」に対し、国立は忠臣蔵外伝ともいえる三作を並べたが、どれも外れなしの年の暮れらしい好企画で楽しめた。

    吉右衛門を座頭に、その親戚である芝雀や歌六・又五郎兄弟、錦之助と一門の若手゚がそれぞれ活躍の場を与えられた。

    そのルーツは三代目中村歌六で、その子息の初代吉右衛門や子福者の三世時蔵、17代目中村勘三郎の3兄弟が今日歌舞伎界全体の中でも層の厚い人材の基礎を築いたわけだから感慨深い。

    今回、吉右衛門は初役で「弥作の鎌腹」に主演したが、これは初代吉右衛門から17代勘三郎へと受け継がれてきた演目。

    先年亡くなった18代勘三郎は、初代吉右衛門譲りの父17代目勘三郎の当たり役を受け継いでいたので、この役も吉右衛門から勘九郎にいずれ伝えてほしいところだ。

    意外なようだが、映画俳優だった初代錦之助は初代吉右衛門の芸風を大切にし、17代目勘三郎や先代又五郎が生前から高く評価していたという。

    初代錦之助が収集した膨大な歌舞伎関係の蔵書は播磨屋と萬屋の若手たちに譲られ、研鑽に活用されている。

    「主税と右衛門七」は、その初代錦之助と親交が深かった脚本家の成澤昌茂の作。初演は松竹の大谷竹次郎会長が東映の錦之助映画を観て若き脚本家も成澤を気に入り、新作歌舞伎を依頼し、当時まだ10代の現幸四郎と吉右衛門兄弟が演じた。ここにも初代錦之助と梨園の子供たちの絆がつながっているのだ。

    ネタバレBOX

    「主税と右衛門七」 家老、大石内蔵助の嫡子である主税(隼人)と、軽輩の家に生まれた右衛門七(歌昇)。右衛門七は主税の口添えで前髪の若輩ながら義士に加わったが、父も母も自害した犠牲の上に右衛門七の願いはかなったのだ。

    討ち入りを目前に、主税は死への恐怖と生への未練が胸をよぎり、自分が口添えしたために右衛門七を討ち入りに追い込んだのではと問う。

    右衛門七を一途に恋い慕う商家の娘お美津の米吉が可憐でいじらしく、新歌舞伎の女形の声色とも違い、女子高校生のように自然な発声が新鮮。思いを受け止められずに本心も告げられぬ若者の苦悩と哀れさを歌昇も的確に表現。

    隼人の主税はお坊ちゃん育ちらしい無神経な残酷さものぞかせる。歌六の内蔵助が若者の心の揺れに理解を示しながらも武家の厳しさを諭す包容力をみせた。

    「弥作の鎌腹」  初代のような愛嬌がないと言いつつ、どうして吉右衛門は愛嬌と哀れさを兼ね備えた初役とも思えぬ堂に入った演技。

    弥作の弟、弥五郎の又五郎が義理と忠義の板挟みをじっくりと演じ、百姓ながら兄を敬う心根を丁寧に表現。

    「忠臣蔵形容画合」 忠臣蔵七段返しということで、仮名手本の大序から七段目まで名場面を舞踊仕立てで見せる。

    大序の若狭之助、判官、師直から三上戸の三人奴に変わり、又五郎、歌昇、種之助親子三人で楽しく踊る。

    歌六の与市兵衛と定九郎の早変わり、米吉、隼人の美しいおかる勘平、歌右衛門の面影を残す魁春も顔世、冨十郎の口跡のよさをしのばせる鷹之資の力弥。

    六段目と違い飄逸なおかやの東蔵と盆踊りに興じる純朴な百姓の歌昇、種之助。仮名手本の七段目でも同じ配役を経験している錦之助の平右衛門、おかるの芝雀が人形振りで演じ、吉右衛門の由良之助が最後に登場して引き締め、幕が下りる。






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    2013/12/27 20:13

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