満足度★★★★★
バラエティ豊かで楽しめた外伝
歌舞伎座の本家「仮名手本忠臣蔵」に対し、国立は忠臣蔵外伝ともいえる三作を並べたが、どれも外れなしの年の暮れらしい好企画で楽しめた。
吉右衛門を座頭に、その親戚である芝雀や歌六・又五郎兄弟、錦之助と一門の若手゚がそれぞれ活躍の場を与えられた。
そのルーツは三代目中村歌六で、その子息の初代吉右衛門や子福者の三世時蔵、17代目中村勘三郎の3兄弟が今日歌舞伎界全体の中でも層の厚い人材の基礎を築いたわけだから感慨深い。
今回、吉右衛門は初役で「弥作の鎌腹」に主演したが、これは初代吉右衛門から17代勘三郎へと受け継がれてきた演目。
先年亡くなった18代勘三郎は、初代吉右衛門譲りの父17代目勘三郎の当たり役を受け継いでいたので、この役も吉右衛門から勘九郎にいずれ伝えてほしいところだ。
意外なようだが、映画俳優だった初代錦之助は初代吉右衛門の芸風を大切にし、17代目勘三郎や先代又五郎が生前から高く評価していたという。
初代錦之助が収集した膨大な歌舞伎関係の蔵書は播磨屋と萬屋の若手たちに譲られ、研鑽に活用されている。
「主税と右衛門七」は、その初代錦之助と親交が深かった脚本家の成澤昌茂の作。初演は松竹の大谷竹次郎会長が東映の錦之助映画を観て若き脚本家も成澤を気に入り、新作歌舞伎を依頼し、当時まだ10代の現幸四郎と吉右衛門兄弟が演じた。ここにも初代錦之助と梨園の子供たちの絆がつながっているのだ。