プラトニック・ギャグ 公演情報 INUTOKUSHI「プラトニック・ギャグ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    挙動不審
    イマドキのナンセンスをちりばめ、惜しげもなく裸体を晒した果てには
    “いつの間にか取り残される”者の孤独があった。
    現実と脳内劇場とを並行して見せる演出も、そのギャップが鮮やかで面白い。
    力のある役者さんがそろって、へらへら笑っているうちに何だか身につまされてくる。
    特に藤尾姦太郎さんの“挙動不審”ぶりが素晴らしく、ブラックなラストが冴える。

    ネタバレBOX

    ノア(堀雄貴)とナギ(石澤希代子)の不器用なラブストーリーが
    アニメのような世界で展開する。
    人体模型のキリト(満間昴平)やヘビコ(竹田有希子)、
    最後には二人を応援する恋敵のスプー(萩原達郎)、
    何かと邪魔する先生のドラン(椎木樹人)などキャラの立った登場人物たちが
    賑やかにスクールライフを繰り広げる。

    一方現実世界では、小学校時代にはいつも一緒に遊んでいたが4人が
    大学生になるとカナ(鈴木アメリ)とシュウスケ(板倉武志)が付き合い始め
    ハルマ(後藤彗)は自分の方向を探りに海外へと旅立つ。
    トウジ(藤尾姦太郎)はいつもふざけてギャグを言っては皆を笑わせていたが
    次第に現実世界から置いてきぼりを食う不器用な男だ。
    大学生になって久しぶりに4人がそろったある日、
    カナとシュウスケが付き合っていることを知らされたトウジは
    タガが外れたような行動に出てみんなを呆れさせる。
    トウジは子どもの頃からカナが好きだったのだ。
    そしてついにトウジは自分が作り上げた脳内世界を破壊し始める…。

    A side とB sideとが平行して描かれ、共に不器用なラブストーリーが展開するのだが
    Aはトウジの脳内で作り上げた理想の世界である事が判ると
    現実世界に上手く対応出来ずにいつもギャグで紛らわせているトウジの孤独が際立つ。
    Aではもう少しで成就する所だったのに、Bで容赦ない現実を突き付けられたトウジは
    自分で作り上げた脳内ラブストーリーを破壊してしまう。
    現代の“逃避”と“置いてきぼり感”がリアルに伝わって来て彼の孤独に共感すると同時に
    上手く行かないと何かを壊さずにいられない、その極端さがイマドキっぽい。

    中途半端だったら見ていられないようなギャグも
    役者陣の指先まで神経の行き届いた表現でぐいぐい惹きつける。
    藤尾姦太郎さんの挙動不審ぶりが素晴らしく、悲哀と狂気を見せて秀逸。
    好きと言う気持ちを表すのに、ギャグで笑わせる事しかできない男が上手い。
    彼にとって意味不明なギャグだけが、彼女へのメッセージだったのだが
    当然それは伝わることもなく、全く報われないところがリアル。
    ナンセンスギャグの中にブラックを潜ませて、最後に深くエグるという構成が効いている。
    フライヤーのデザインやBGMのセンスも素敵。

    「行かないで。ここにいて。ずっとここにいて」という
    最後にようやく吐いたトウジの台詞が痛いほど切ない。




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    2013/12/27 04:47

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