SHOWの少々2 公演情報 劇団SHOW 「SHOWの少々2」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    化けるかも
    THE SHOWの前公演『贋作☆スイミー』のセンスのよさに驚いたので、
    その作・演出だった栗☆兎氏の作品を観にいった。

    私が観に行った日の公演は、
    作・演出:松坂貴大『過失』
    作・演出:栗☆兎『川越駅西口物語』

    『過失』は割とスタンダードな作品。
    『川越駅西口物語』は、前作同様、とても興味深く拝見した。
    演出のセンスが抜群に良い。

    詳細は「ネタバレBOX」に書くが、
    栗☆兎氏には、今後化けるのではないかと思わせる何かがある。

    ネタバレBOX

    川越駅西口を舞台に、そこを過ぎていく日常の描写から物語は始まる。
    西口は、華やかな東口と違って少し陰がある。
    この公演が行われている尚美学園は、その西口からバスに乗って10分位の処にある。
    西口を利用する人の多くは会社員か学生であり、
    両者共に、そこは常に通過するだけの場所だそうだ。
    (観客である私も、バスで尚美学園に行ったので、この作品で語られていることの幾ばくかは、来る途中に感じとることができた。)

    その普段は通過するだけの場所を巡って物語は展開していく。
    まず、その描写力が素晴らしい。日常のほんとうに些細なことを描くことで、その物語にリアリティを持たせている。それを支えているのが、ドキュメンタリー的と言ってもいいような、演出。そして、それを演じる役者のラフな演技。ラフでありながら、面白く観られるのは、役者たちの個性に依るところも大きい。とても個性的で魅力的な役者たちである。

    その日常の細部と対比するように、巨視的な見方が示される。
    西口は改築工事をしていて、数年後には近代的なロータリーができるのだという。
    ここで、都市というものを見る鳥瞰的な視点と、未来というものを見る歴史的視点の二つの巨視が示される。そこに、かつてここには川越少年刑務所があったという過去の視点か加わり、通時的視点は補填される。

    更に、そこに西口にたくさんいる鳩やムクドリ(?)の話が重なる。それによって、人間中心の世界観に対して、動物や自然からの視点が示される。
    また、川越駅西口から程ない処に雀ノ森氷川神社というものがあり、鳥の問題は過去の歴史にも接続させられている。

    このように様々な視点が示されることで、普段はただ通り過ぎるだけで、何も見ていなかった川越駅西口が、全く別の彩りをもった景色として見えてくる。

    ここで示された様々な題目は、それぞれに繋がっているのか、いないのか。重なっているものは、偶然か必然か。これらは観客が考えることとして投げ出されている。

    この点を開かれた作品と考えるか、テーマが絞り切れていない作品と考えるかは様々な見解があるだろう。

    私は後者だと思った。充分に面白い問題提起がなされているにも拘わらず、散漫な印象で、心に残るものが少ない。
    日常的な細部への対比として様々な視点が示されるけれど、
    それらはあくまで添え物という感じで、その両者が絡み合いうねりを生むことはない。
    様々な視点が現在を生きる私(作者であり、演者であり、観客)の日常に対して、どう関係を持つのかが、より有機的な繋がりをもって示すことができていたら(あるいは、そんな繋がりなど今日は全くもって断絶してしまっているということを示すのでもよい)、より深い印象の作品になったのではないか。

    また、これは前作でも指摘したことだが、最近流行の現代演劇(「マームとジプシー」などかな?、、、)によくある文体と発語の型のようなものを使っているので、モノマネっぱさがどうしても耳についてしまう。これは決定的にもったいないと思う。オリジナルの実力があるのだから、亜流だと思われたら損だ。

    正直に言えば、現状では、学生劇団の中では桁違いに面白いと思うけれど、一般の表現者の地平で評したら、賛辞を贈るほどではない。
    だが、この栗☆兎氏には、ひょっとしたら大化けするんじゃないかと思わせる要素が多分にある。

    役者さんたちもとても個性的で魅力的だった。

    今後の活動にも期待しています!

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    2013/12/17 23:14

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