満足度★★★
数値の可視化パフォーマンス
東京23区内に住むに人の性別や年齢、住んでいる区の比率を100人に代表させ、様々なYES/NOの質問にステージ上で立つ位置で答えて行く作品で、ユーモアも交えながら色々な形で東京の人達のリアル(に見える)な姿が浮き彫りにされ、興味深かったです。
白い円形の回り舞台が、奥には舞台を真上から撮った映像が映し出される円形のスクリーンが吊られたシンプルなセット
冒頭に進行役の人による簡単な説明に続いて、100人が自己紹介と持って来た大事な物の説明を行う導入部があり、1日の活動を1時間毎に区切って、その時間帯にしている動作をさせるパフォーマンスが続きました。
次に質問に対してYES/NOで左右に分かれるパートとなり、最初は日常的な質問だったのが、天皇制や憲法改正あるいは不倫や性風俗についての政治的・性的な質問になって行き、顔が分かる状態では答え難いということで、暗転した中でペンライトを点けることによって進行しました。
出演者による、前もって準備していない質問に答えるパート、客席から質問を募るパート、逆に観客に質問に対して挙手させるパート、階段状のステージが組まれ質問に対してYESの人が中央に集まるパートと展開しました。
途中からはバンドによる生演奏が入り、ラストは音楽に合わせて踊る、コーダ的なパートで、暗転した中でペンライトを振り回して発生する残像が美しかったです。
数字からは見えて来ない、個人の存在やその人の葛藤が舞台上に現れていて魅力的でしたが、「今日の公演で嘘をついた人」という質問で多くの人がYESだったりと、舞台上での答えの全てが真実ではないことについても表現されていて、色々な思惑が背後に感じられてて興味深かったです。
劇場に入る時に配られた分厚いブックレットには出演者1人に1ページが当てられいて読み応えがありました。実力派のミュージシャンを集めたバンドの演奏自体は良かったものの、生演奏である必然性があまり感じられなくて勿体ないと思いました。
現代美術やデザイン(特にオランダの建築設計事務所OMA周辺の方法論)の領域に近い作品で、「演劇」を期待して観ると肩透かしを食らいますが、役者ではない普通の人達が観客にとっても身近な質問に答えて行く様子に親近感を覚える作りになっていて、熱心な演劇ファンではない人の方がフランクに楽しめると思いました。