朗読劇 しっぽのなかまたち3 公演情報 ドリームプラス株式会社「朗読劇 しっぽのなかまたち3」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    現代のペット問題を取り上げつつペットの気持ちに近づける(ような気がする)いいお話
    歌手/声優の牧野由依さんの朗読を聞いてみたくて観劇。
    (結構豪華な制作陣、キャストについては当日までまったく
    把握してませんでした。)
    ペット(犬/猫)とその飼い主達に関する短編劇をいくつか、
    またその間奏に歌その他の企画が入る、という盛りだくさんな2時間。
    各話内容は結構深く現代の様々なペット問題などを
    コミカルに組み込みつつも必ず涙を誘われてしまうものでした。
    お話だけでなく各演者さんも熱意ある語りっぷりで
    良い形で気持ちを持って行かれました。

    ネタバレBOX

    考えてみたら牧野由依さんについては歌声以外(顔、普段の声など)知らず、
    最後の話まで誰が牧野由依さんか分かりませんでした。

    制作陣が朗読劇「私の頭の中の消しゴム」(2年連続観賞しました)の
    脚本担当の人や、その他も有名人が揃っている事を現地で知りました。
    まあ、あくまでも主体は朗読劇の演技(群読)の方だとは思っていたのですが、
    「私の頭の中の消しゴム」は2度観て2度ともちゃんと感動できたので、
    結構期待度上がりました。


    開場時パンフ販売などは見当たらず、
    「キャストとそのペットの写真」の販売をやっていたのですが、
    どれが牧野由依さんか分からず買えませんでした。
    (牧野由依Loveな先輩がいたので自慢したかったんですが( ´ー`))


    で、開幕。
    まず演奏担当らしき1人が入場(この人は結局全話の効果音から
    演奏/劇間の間奏/歌からをこなす、かなり多才な人でした)、
    そして物語の始まり始まり。


      どこかで短編集というような話を聞いていたような気もするのですが、
      現地に貼ってあった案内パンフには1つの物語についてしか
      書いてなかったので「2時間長編」を想像していました。

      「朗読劇の2時間長編(休憩なし)は
      かなり気持ちを引き込まれるような良い出来のモノでないと
      とても辛いことになるぞ」

      と、結構緊張しての観劇始まりでしたが、
      短編、間奏、短編、間奏~の良いテンポでの流れだったので、
      いい感じに肩の力が抜けていって良かったです。


    ※ この朗読劇では登場人物は人もペットもみんなしゃべります。


    ●母親、少年(子供)、若(い)犬、老犬のお話
    耳の聴こえない少年、その母親、老犬、元野良だった若犬、のお話。
    老犬は耳の聴こえない少年の耳代わりになって、
    炊飯器でご飯が炊けた音を知らせたり、
    その他色々と少年を助けてくれていました。

    しかしもう歳も歳なので、若犬にその役を継いでもらえないかと
    母親は思い、そういう教室に若犬を預けたりもしたのですが、
    元野良で自由に憧れる若犬は、そんな事おかまいなしに
    勝手気ままに過ごしていました。


    「父、母、少年、老犬、若犬、全員で来年も
    あの山の向こうの花火を観よう」と約束していたのですが、
    当日母親は「急に仕事が入ってしまった」と約束を破ってしまいます。
    (※父はこの1年の間に亡くなってしまった模様。)


    諦めきれなかった少年は耳が聴こえないというハンデをかかえつつ、
    老犬、若犬を連れて、山の向こうの花火を観に徒歩で向かいます。

    少年と老犬の脚では山を超えるのはかなり大変で夕方になってしまい、
    1匹だけ軽快に進んでいた若犬は
    「飼い犬なんてガラじゃない、コレを機にまた野良犬になってしまおう」
    と逃げ出してしまいます。

    そして、山を登ったあげく迷子になってしまう若犬に対して
    少年と老犬が探しに来るのですが、もう真夜中。
    結局花火にも間に合わず帰ろうとした所で
    老犬の具合が悪くなってしまい、

    少年と若犬で「助けを呼んで来るから待ってて」と
    2人で山を降りようとします。

    そこへ走ってくるトラック、耳の聞こえない少年は気づきません。
    若犬は「ワンワン!(おい、車だぞ、危ないぞ!)」と
    リードを引いて少年に伝えようとするのですが、
    今まで散々勝手な行動をとってきた報いか
    またいつものおふざけかと少年は取り合わず、

    あわや車に轢かれる!

    というタイミング、老犬がなんとか走ってきて少年と若犬に
    体当たりして間一髪、みんな助かりました。

    この経験を機に若犬は心を入れ替えました。

    そして10年後、大学生になった少年、でかける際に
    若犬に着せる服には「聴導犬」(耳の聞こえない人を補助する犬)の文字が。
    母親と少年、若犬は部屋に飾られている2つの遺影(父親と老犬)に
    挨拶をして出かけていく、というお話。


    まず、耳の聞こえない少年とそれを助ける老犬、
    この関係だけで涙腺がゆるみました。

    そして、逃げて迷った自分を探しに来てくれた少年と老犬、
    車に轢かれそうになった所を命がけで助けに来た老犬に心打たれ、
    少年を助ける「聴導犬」になった若犬の誇らしげな姿が印象的でした。




    ●動物病院での一幕
    ・ 大きく育ったチワワと飼い主のキャバクラ嬢

    ・ 避妊していない発情期の♀猫とそれを溺愛する男

    ・ 飼い犬のゴールデンレトリバー(歳で心臓が悪い)を
      妻と別れてから更に溺愛するようになった男

    そして

    ・ 動物の言葉が分かる医師

    とで繰り広げられるやりとり。

    医師役1人に対して、
    飼い主3人とそれぞれのペット3匹を3人の演者が順次演じ分けていく、
    というのが面白い、と思えるお話でした。

    ・ 大きく育ったチワワを
      「こんなに大きくなってこれ本当にチワワですか?」
      「彼氏と旅行に行くんでこのチワワは病院にあげます」
      とムチャを言うキャバ嬢。

    ・ ♀猫を溺愛する飼い主と、発情期の猫の発情ぶり。

    ・ 「ゴールデンレトリバーが心臓の薬だけ飲んでくれない」
      と心配する飼い主と、
      ゴールデンレトリバー側は
      「奥さんと別れてから自分に更に執心して、
      本人も肺の病気で死にかけたのに
      ペットの自分の事だけを考え、主人は人生を損している。
      主人にこれ以上迷惑をかけるぐらいならもう死にたいから
      治療はしないでくれ」と医師に訴えます。


    それら飼い主とペットとのやりとりの中で葛藤し、
    そして、「動物の言葉が分かる自分がなぜ獣医になったのか」、
    という事に立ち返り(詳細は説明されませんが)、

    ・ キャバクラ嬢のチワワは
      「うちで引き取るから2度とペットなんか飼うな!」
      と追い払い(引取先もすぐに決まり)

    ・ ♀猫の件は(??)どうしたか忘れてしまいました

    ・ ゴールデンレトリバーの件は、
      「ゴールデンもご主人を心配されています、
      ペットは飼い主を見ているものです、
      まず自分の事を大事にして、その上でゴールデンも
      大切にしてあげてください」
      と諭す

    という一幕。

    ペットをおもちゃやマスコットのように飼う今の風潮や
    ペットに依存する飼い主とそれを想いやり過ぎる
    飼い主に似すぎてしまったゴールデン(ゴールデンの心情は想像ですが)、
    そういったものに現代のペット社会の問題を見たような気がしたお話でした。

    どこかの場面でやはり涙腺が緩んだのですが、
    どこだったかちょっと思い出せません。
    というか、これら全話について泣かなかったお話はありませんでした。




    ●保健所での一幕
    保健所で明日は引取会(一般の引き取り手に気に入ってもらえれば
    引き取ってもらえる、ひきとってもらえなければ殺処分)、
    という状況の中で
    悪ぶる不良犬4匹それぞれの今までの飼い主との関係/人生が悲しく、
    またそれを人に好かれる(演技が出来る)かわいい犬にしてあげます、
    と教育の為にやってきた老犬、
    そのやりとりに笑い、
    しかしそれぞれの犬のこれまでの人生(犬生)の悲哀に涙してしまいました。

    最後、それぞれの犬について
    「これならきっと引き取ってもらえますよ」
    とその場を後にしようとする老犬、

    老犬も引き取り手が見つからなければ殺処分なのに、
    「なぜこんな事をしているのか?」
    という質問に、
    「15年間自分を愛してくれた飼い主が、自分が病気でもう長くないと
    知ったら、死ぬ所は見たくない、と保健所へ連れてきたんです。
    もう、みんな(犬達)に囲まれて自分は死にたいんです」
    と何かを悟ってしまっていた老犬。

    しかし、最後引取会に現れたのはかつて自分を保健所へ預けた飼い主、
    そしてその飼い主が話している言葉(人語)を他の犬に訳してもらうと
    「ごめん、本当にすまなかった」との謝罪の言葉。

    そして閉幕。
    みんな引き取り手が見つかるといいなあ・・・( ´ー`)


    ペットは飼い主を選べません、
    ・ 散歩にもつれていってもらえずずっと家に閉じ込められていた犬
    ・ 何をしてもいつも殴られていた犬
    ・ ペットショップで自分だけかわいくない、という理由で
      最後まで売れず最終的に保健所送りにされてしまった犬
    ・ 頭もよく人間の為に尽くしたのに結局保健所送りになってしまった犬
      (ここだけ理由がよく分かりませんでした)
    それぞれ悲しいドラマを持った犬達に、
    「これって本当にある事なんだよな」と共感し、
    そして少しでもハッピーに終わればいいなあ、と思わせられました。

    演者(犬)の演技の熱さが一番光ったのはこのお話かも知れません。




    ●やさしい飼い主(主人公)と飼い猫♂と新たに拾われた♀猫の話
    主人公が野良猫だった♂猫を拾いって数年、
    ある日新たに♀猫を拾ってきます。

    自分は捨てられたんじゃない、と言い張る♀猫、
    しかし実は、飼い主一家に愛されて暮らしてきたけど、
    飼い主一家に生まれた赤ちゃんが猫アレルギーだと分かり、
    ゆずり先を探したが見つからず、最後には
    どこか遠い所に放置されて何も食べ物もなく
    死にかけている所を主人公に助けられた、という。


    しかしある日、築50年のアパートを取り壊すから
    立ち退いてくれ、と大家からの一言。

    猫2匹を飼える新しい部屋を必死で探しますが全く見つかりません、
    ある日「ペット1匹なら飼える家がある」と友達が紹介してくれますが
    主人公は「そんなのダメだ!みんな一緒じゃなきゃダメなんだ!
    この子達には捨てられるなんてそんな想いもうさせたくない」と。

    それを聞いた♂猫が
    「実は俺はもう飼われる暮らしに飽きていたんだ、
    元野良だから外でもなんとかなるだろう、おれは出て行くぜ」
    と♀猫に言い残しボロアパートの窓をこじ開けて出て行ってしまいます。


    「1匹なら飼える家があるんだろう?」という♂猫のやさしさ/気遣い、
    しかしそれが逆に主人公を追い詰めます。
    毎日街をめぐり♂猫を探す主人公、しかし見つかりません。

    そして♂猫の方もひさしぶりに出た街はあまりにもきびしく
    食べるものすら見つからず死にかけてたどり着いたのは、
    かつての自分の家の隣り。

      ここで伏線として張られていた、
      室内飼いなのに、隣りの家のババアが♂猫が庭にうんちをした、
      と思い込んでいてアパートの窓にいると毎回睨んでくる、
      という話が生きてきます。

    ♀猫が「♂猫の匂いがする!すぐそこに♂猫がいるニャン!」と
    飼い主に訴え窓に近づこうとしますが、
    主人公は「お前も出ていこうというのか?」と涙してしまい
    とりあってくれません。

    そこへ隣りのババアの人が「♂猫がうちの庭にいるわよっ!どういうことっ!」
    と怒鳴りこんできた事で主人公と飼い猫♂は再会する事ができました。


    最後、家が見つかったかどうかは語られませんが、
    きっとこの3人(1人と2匹)はきっと離れる事はないのだろうなあ、
    とやさしい気持ちにさせられました。

    こんなやさしい飼い主さんがいたら幸せだよなあ、と。




    各話それぞれペットに対しての今の社会問題を語りつつも、
    飼い主に愛され、そして飼い主を愛しているペットと、
    それを愛する飼い主との
    ほのぼのと心温まるエピソードを織り交ぜた、
    非常にやさしいお話だと思いました。


    【気になった点】
    ・ 観客参加型の朗読劇、という事で各お話の序盤/中盤に、
      クイズその他演者と観客とのやりとりの場が入るのですが、
      毎話入るこのやりとりの中で、
      「ちょっと(演者さんが)調子にのって遊びまくったり、
      せっかく入り込んできた話のこしを折りすぎでは?」
      という気分がしないでもありませんでした。
      (素直にお話だけで泣かせてほしかったような。
      しかし、それだと2時間は結構疲れてしまったのかも
      分かりませんが。。。)

    ・ よく喋る役、あまり喋らない役、いろいろな役がありますが、
      やはり熱が入ってくるとよく喋る役の方の負担は大きかったようで
      噛む場面が結構見受けられました。
      「それぐらい見逃せ」とは思いますが、
      「一番いい場面で」となってしまうと・・・

      そういう粗が結構目立つ部分もあり、
      少し演技力にまだ欠けている部分があるのかなあ、と

    ・ 集客に困っていたのか、結構観客数が少なかったです。
      わざと席数を抑えているのならいいのですが、
      これだけ良いお話に3階フロアまである劇場の
      1階のみかつそこも埋まりきっていない、という
      (平日だからかも知れませんが)。

      「少し宣伝活動その他に力を入れた方がよいのでは?」と老婆心ながら。

      せっかくのいいお話、演技なのにもったいない。

    ペットを飼う事に憧れる子どもたちにぜひ聴かせてあげたいお話でした。

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    2013/11/23 00:54

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