お嬢さん 公演情報 浮世企画「お嬢さん」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    当パン挨拶文のタモさんのくだりも◎
     女三代を描いたこの家族劇、初代と二代目の終盤のやり取りに尽きる。
     観て良かった。
     それまでは細かいアラが気になっていまひとつハマれかなかったが、そんなことがどうでもよくなるくらいあのシーンにはしんみり、ホロリとさせられた。

    ネタバレBOX

     ただ、あのやり取りを見ると、なぜあの母娘(おやこ)、つまり初代と二代目は初代が危篤に陥るまでああも反りが合わなかったのか、分からなくなってしまうのも事実。
    それもそのはずで、この点は脚本が巧いというのか、ズルいというのか、初代は寝たきりという設定ゆえ初代と二代目のカラミが終盤のそのシーンまでほとんどなく、従って、母娘(おやこ)の諍いの描写がほとんどない、というか、描写せずに済んでいるのだ。
     甘粕さん演じる初代、すなわちお婆さんが劇の進行にほとんどからまないことが本作に面白味を与えているとはいえ、険悪な親子関係に説得力を持たせるためにも、初代と二代目がどんなことで揉めていたのか、そこはもっと具体的に描かれるべきだった。
     ただ、もっと根本的なことを言うなら、本作、女が強い家系の“血の劇”として、いささかあっさりし過ぎていたきらいが。女三代だけで済まさず、劇中では会話で説明されるのみにとどまるその前の三代もちゃんと役者を割り当てて描いてこそ、“女代々の血の劇”としての本作は本当の完成を見たのではないだろうか?
     やっぱり血って粘っこいものだから、時間をかけて粘っこく描かなければその凄みは伝わらない。
     ただ、そんなに時間をかけてちゃあケラリーノ・サンドロヴィッチもびっくりの四時間超え大河劇になってしまうが、それでも尺を大幅に伸ばして再演する意義はあると思う。
     苦言ついでに言うなら、笑い所になりえた二代目の不倫のくだりがハネきらずに終わったのはもったいなかった。
     これは二代目を演じた広正裕子さんが美人すぎたがゆえ。
     不倫に浮かれて浮気相手にさえヒかれてしまう間抜けな役回りをあれだけの美女が演じてもリアリティが出ないのだ。本作では不倫相手がグレードの低い安い男と設定されていただけになおのこと。あれだけの美女はあんな安い男と不倫なんぞしないし、よしんばしたとしても説得力なんて出ない。
     最後にもう一つ。
     初代と二代目は同じ“そういう血筋”の持ち主だと劇中で判るのだから、その血が三代目、つまり安い男といっとき浮気する二代目の娘・仁美ちゃんにも継がれていることをほのめかすシーンがあっても良かったのではないだろうか?
     もし付け足すのなら、そのシーンはちょっとコミカルに、そして可愛らしく描いて欲しいところ。

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    2013/11/17 02:12

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