満足度★★★★★
アンビヴァレントな、、、オリザ
青年海外協力隊は善か偽善か。
政府の海外支援は、本当に援助なのか、企業ぐるみの第三世界支配(金儲け)の一環なのか、、、などに揺れる物語。
作品とその作者を重ねて見る観方はよくないと言われるが、
この作品においては、そのように観てしまった。
ここで揺れている主体は、青年海外協力隊であり、この戯曲を初演時に書いた桜美林大学の学生(つまり、現代の若者)であり、そして何より平田オリザ氏自身のように思えた。
アジア問題をはじめ社会批評的な作品を作りながら、
教育について言及・実践を重ね、政府系の権威的な役職にも付き、
一時は民主党政権で内閣官房参与を務めるなど、
政治的に賛否の別れる立場で振る舞い続けている平田オリザ氏。
ここで描かれているのは、彼の葛藤なのではないか。
それは、権力批判や資本主義批判をした瞬間に、その批判される対象に自分も重ならざるを得ない私たち観客自身の姿とも重なる。
(もっとも分り易い例で言えば、日本に住んでいるだけで、世界レベルの構造の中では、好む好まざるにかかわらず、不可避的に搾取する側になってしまっているということなどが挙げられる。)
また、近未来に日本が財政破綻することや、(TPP交渉などによって)農業が壊滅することなど、10年前に書かれた脚本なれど、初演当時より、今の方が物語の現実味を帯びてきている感じもする。そういう批評性も素晴らしい。
ただし、芝居としては、かつて見た青年団の作品と比べると、それほど刺激的とは思えなかった。
そのため、芝居の満足度は☆4ですが、やはりそこに平田氏自身の葛藤を感じるので☆5。