HIDE AND SEEK 公演情報 パラドックス定数「HIDE AND SEEK」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    視覚と聴覚の刺激を見事に統一した稀な作品
    「虚構と現実の境界」--その曖昧さを、物語としても目に見えるものとしても描き出した力作。舞台という表現の可能性を真摯に追求して、視聴覚ともに同じ方向性の刺激を生み出すことのできた稀な例ではないかと思います。中央の背景に三角巾のように赤い布の後方に垂らして、その裏から出入りさせたり、さらに床に広がる赤い布の下からうごめくように這い上がらせたりを可能したあの美術は、シンプルながら秀逸でした。

    江戸川乱歩と横溝正史と夢野久作という作家たちに交流があったってことも知らなかったし、子供のころに探偵小説に明け暮れたなんて本好きでもなかった自分ですが、それでもきちんと3者の関係が理解できたということは、作者の取材力とそれをせりふを通して伝えられる咀嚼力が優れているんでしょう。しかも、史実をモチーフにしたフィクションというだけにとどまらず、きちんとがその物語を通して、「小説の登場人物は作家のものなのか?」という劇作家の方ならではの視点がはっきり描かれていることで、「評伝劇」風作品からまったくのオリジナル作品へ昇華できたと思います。作家が死んでもなおテレビや映画で生き続ける金田一耕介。今や「現実」の作者よりも大きな力を持つかもしれない「虚構」の存在は、コンテンツの時代と呼ばれる今、ますます怪物じみてくるかもしれないなと思った次第。

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    2008/06/10 17:27

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