満足度★★★★★
あなたに逢えてよかった。
不老不死。大昔から語られてきた永遠のテーマ。誰もが一度は想像をめぐらせたことがあるけど、誰も経験したことはない境地。
ずっと死なない伯爵のことばは、流されてきた後悔に苛まれてか少し陰をおびているけど、天然入ったとぼけっぷりは、やっぱりクスリと笑わされます。
暗転で細かく切り替わる場面も、伯爵のボケをとても引き立ててくれたと思います。
人との優しいつながりを手にしても、誰も伯爵のように永くは生きられず、気がつけば56億年。でも、そのあいだ「伯爵」はずっと「伯爵」で、「先生」や「アニキ」や「宇宙人」になったりはしませんでした。もっと愛してくれた人も、もっと永い時間を一緒に過ごしてくれた人もいたかもしれないけど、ブルボンと過ごした時間は特別だったんだね。
そして最後の呑み会。
そこでは、創り手の方々の、観ているぼくたちの「そうあって欲しい」という望みが結実していました。きっとみんな後悔なくお別れすることの難しさを知っているから。あのラストシーンでは、自分のこれまでの不実までも赦されたような、そんな救われた気持ちになれました。
すべての出会いに「ごめんね」よりも「ありがとう」が交わされてたら嬉しいな。
公演パンフで中嶋さんは「きっともうこんな楽しさと苦しさがパンパンに詰まったお話は書かないと思います」と書いていましたが、また書いてください。
『伯爵のおるすばん』を、ぼくは涙よりも笑顔でうけとることができました。どんな寂しさもユーモアと優しさで包んでぼくたちに届けてくれる、そんな作品を待っています。