冷房要らずの「一線を越えた」旋律
数々の「猟奇的な舞台」を制作し、観客を戦慄させてきた『角角ストロガのフ』
初めて体験した私は、壊れてゆく人々の姿に冷房以上の涼しさを感じざるをえなかった。
お台場のジョイポリスでも体験できない涼しさだろう。
では、『貞子3D』を上回る「ホラー」か?
いや、「サスペンス」である。
いしだ壱成 演じる人気若手俳優•アラキが、冤罪に巻き込まれ、国家権力の支配する「囚人たちの町」へ移送されてしまう。
「優しさを与えるべきではない。
軽蔑と受け止められるから」
閉ざされた町でアラキは町民の更生を進める一方、事件の新たな犯人探しが始まった…。
私には、いしだ壱成の俳優人生と、役のアラキは同一人物ではないかと思えてならない。
冒頭、マネージャーの声で「真面目な男」と、観客へ紹介された。
「女には目がない」こともマスコミに報じられた。
冤罪というのは、アラキの浮気相手らが被害者となっている事件である。
人気若手俳優を いしだ壱成が演じた訳ではなかった。
いしだ壱成こそ、人気若手俳優であって、その苦労や感情を演じる必要はないからである。
これは、明確な「当て書き」だろう。
形式的理由から そう述べているのではなく、あえて「ダブらせよう」「リンクさせよう」という演出だったためだ。