月光のつゝしみ 公演情報 ハイバイ「月光のつゝしみ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    とにかくキツイ舞台だった
    いろいろとキツイ。
    会話がキツイ。
    会話のないところがキツイ。
    居心地の悪さはハンパない。

    ネタバレBOX

    「家族同士の付き合いがあるほどの関係ではない友人に家に行ったら、その友人が家族と罵りあっていて、どうしたらいいのかわからず、とてもいたたまれない気持ちになってしまった」
    のような気持ちになった。
    とても居心地が悪い。

    台詞が痛いのだ。
    無言の長さも恐い。
    どこで姉が話し出すのか、劇場の空気が凍り付いたようにキンと張った。

    他人が他人に向ける苛立ち、例えば、民男(弟)が妻に対して「(民男の実家のあった城下町に)一度も行ったことがないだと!」と言葉を荒立てることは、言われた妻だけでなく、その場に居合わせた人にも辛く響く。
    誰の言葉の矛先が自分でないとしても、その場にいる人にはチクチクしてしまうのだ。

    たとえ相手を思いやっているような台詞であっても、なかなか額面通りには受け取りにくい響きが絶えずする。
    それを受ける側の緊張感までもが伝わる。

    頭のいい姉には誰もついていけないが、実は同じように頭のいい弟にも妻はついていけてない。
    彼ら姉弟は、気がつかずに自分の身の回りにいる「普通の人たち」を見下している。
    つまり、自分たちと同じように考え行動できない者たちに苛立っている。
    苛立ちは自分自身にも及んでいる。

    あらゆるものに噛み付き、グイグイ、ネチネチと突いてくる。揚げ足を取る。言葉尻をつかまえる。
    彼ら2人は、自分がそうしているという自覚はあるのではないだろうか。
    頭がいいから、わかっている。
    だから、相手の弱り具合までわかっているのではないだろうか。
    しかし、サディストというわけではなく、それを楽しんでいるわけではなさそうだ。

    楽しくないのにやってしまう。
    すなわち、そういう毒が自分の身体にも回ってくる。
    そういう彼らの悲しみがうかがえる。誰にも理解されない。
    いや、姉と弟にしかわからない悲しみ。

    控え目に言って姉のほうは頭がおかしい。
    学校という狭い場所にいて、先生という王様になっているから、周囲との距離感や度合いがつかめていないのだろう。たぶんそれがもとで学校を出てきてしまった。

    こういう先生はたぶんいる。いや、きっといる。
    こんな風に「どういうこと」「どういうこと」と詰問される生徒はたまらない。

    姉と弟の、自分を含めたあらゆる方向に向けられた刃によって、ある者は手首を切り、ある者はどうしたらいいのかわからず、途方に暮れる。
    しかし、姉と弟のほうは底ではわかり合っている。互いが吐いた毒の中にいることもわかっている。
    もちろん姉と弟だから、友人や妻などとは、歴史が違う。さらに彼ら特有の、「頭がいい」世界にいるという共通点もある。

    どうやら徹底的にイヤなヤツというわけでもなさそうなのだ。
    姉を好いている男もいろようだし、弟も結婚しているし、友人もいる。

    ラストで姉と弟が雪が積もっている家の外にプレゼントを拾いに行く様子は、どこか楽しげ。姉弟ならではの、肉親の会話として聞こえてくる。
    それを、たぶん寒いであろう家の中から聞いている、妻の心の中はどこよりも寒いだろう。
    弟の友人はこの後、彼らと会うことはないだろうが、妻はこの姉弟と暮らすのだ。

    彼女は、今までもずっと寒い部屋に1人でいて、これからも1人寒い部屋にいることになるのだろう。

    ホントにキツイ舞台だった。


    永井若葉さんという女優さんほど、困って泣きそうな八の字まゆ毛が似合う人はいないだろう。額の膨らみまで似合ってしまう。
    平原テツさんほど、実はイヤなヤツだった、を演じられる男優さんもいないと思う。妻に対する本音には心底酷いなと思ってしまった。
    姉役の能島瑞穂さんは本当に凄まじかった。恐いと思った。
    弟の松井周さんも、姉、妻、友人という3人に対する自分の「役割」を見せるというところがなんとも良かった。

    劇場から無言で帰宅する感じになった。

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    2013/09/27 06:20

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