兄帰る 公演情報 ニ兎社「兄帰る」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    これで、岸田賞は意外
    永井愛さんは大好きな劇作家であり演出家です。

    永井作品に、何度も感激を頂いた身としては、この作品にも、感動を頂いたと錯覚しようとする自分もいたのですが、やはり無理でした。

    途中までは、面白く拝見しました。ですが、正春の登場あたりから、時計が気になり出しました。

    あー、これは、永井さん、シチュエーションアイディアに重きを置き過ぎて、人間描写がおざなりになっていると感じました。

    全体を通して、手際の悪い脚本の粗が目立ち、居心地が悪くなりました。

    結局はそういうことなのねとわかるまでの、枝葉末節、装飾を施し過ぎた、引っ張りすぎの脚本に、冗満さを感じて、後半退屈でした。

    20分は、余計な部分があったように感じます。

    素敵なセンスのインテリアは、芝居の中身とも関係する、重要な舞台セットですが、部屋の奥に見える植木の置いてある窓の外の景色が、マンションのベランダ風で、そこから庭に続くという設定なんでしょうが、どうしても、家族以外の人達が羨んで話題にする、百日紅の咲く一戸建ての庭は想像出来かねました。

    役者さんは、どなたも、気持良い好演です。ただ、皆さん、演出に忠実過ぎたきらいもあります。御自身で、役の気持ちを掘り下げて下さる役者さんがいらしたら、もっと深みのある舞台になった気もします。

    ネタバレBOX

    草刈さんは、台詞のないバレエの世界から、女優さんに転身されてから、まだ何年も経っていないのに、台詞表現がお上手で、また感心してしまいました。草刈さん演じる、真弓は、半分正義感の持ち主で、全身全霊を通して、正義の人になりきれないところが、自分に重なり、妙に感情移入して観ていました。

    でも、家主の保の姉の夫である正春が、冷蔵庫の修理に訪れるあたりから、人間描写より、シチュエーションのアイデアに、作者が溺れてしまったような気がします。

    いくら、親戚が電気屋だと言っても、あーも直らないまま、何日も、彼に修理を任せているなんて、無理があります。趣味の電化製品ではなく、冷蔵庫です。正春に直せないなら、私ならすぐに他の電気屋に頼みます。

    兄が実は、売春斡旋ツアーのコンダクターだったと知っている正春を、何度も修理に訪れさせ、謎解きを引っ張るのは、作者の腹積もりであって、登場人物の気持ちとはかけ離れた行為でしかありません。

    真弓と友人金井塚との関係にしても、もっと真弓の内面を照らす方向に筆を動かすこともできたのに、何だか中途半端でした。

    最後の謎解きで観客にわかった、兄の正体は、そうであるなら、もう少し、深い心象描写の演出が必要だったように思います。(これは、脚本の問題ではなく、演出の問題だと思いました。)この舞台からは、兄の行動の整合性に不備があると感じます。最初の兄の登場の時の臭いも、あーいう設定の話が真実なら、少し無理があった気がします。

    それ程重要にも思えない人物の性格付けの強調も、しつこくて、無駄なシーンだと感じるところも多々ありました。

    笑いを取るために設置されるシーンは、もっとテンポ良く!地方テレビのCMみたいに、何度も繰り返すと、逆効果で、冗満になると思います。

    叔母の壊れた蓄音器ネタとか、あまりストーリーと関係のない部分は、何度も時間を取る程の場面ではなかったように感じました。

    半分正義感の真弓が、自分の性格に疑念を抱く部分などをもっと膨らませて、対極にある兄の生き方とのバランスを前面に押し出した脚本であれば良かったのにと、残念です。

    真弓が、友人に対して、「金井塚!」と呼び捨てにする部分などに、真弓本人が気付いていない、周囲の人間に対する支配欲など、人間描写劇の隠し味はたくさん入っていたのに、それを生かしきれない脚本に、歯がゆさを感じてしまいました。

    2

    2013/09/02 23:01

    0

    0

  • きゃる様

    初演を見逃したので、楽しみにしていたのですが、やや期待外れでした。

    作者の作為だけで、無理やり構築された感があって…。

    永井作品は、やはり「こんにちは母さん」が最高作だった気がします。

    2013/09/18 03:07

    KAE 様

    これ、観に行きたかったのですが、最近は古い日本映画鑑賞を最優先しているため、日程がとれず、断念しました。

    永井愛さんの作なので、KAEさんはきっとご覧になると思い、UPを期待しました(笑)。

    非常に丁寧な感想を書いていただき、楽しく拝読いたしました。ありがとうございました。

    2013/09/18 00:35

このページのQRコードです。

拡大