彼らの敵 公演情報 ミナモザ「彼らの敵」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    自由について
    正直なところ、ドキュメンタリーと訴えたい(と思われる)箇所の両方に力点があったせいか、若干バラけてしまった気がしないでもない。

    それが非常に残念だった気がした。

    個人的には、もっと観客の想像力を信じて、はしょれるところは極力はしょって(それは他の多くの演劇にも言えることだけれど
    訴えたいところに自然と観客の目を集中させるようにした方が構成としては優れているんではないかと思った。

    前日にクローズアップ現代で「はだしのゲン」特集を観たせいか、
    似てるな、と思っただけに、
    マンガと比べると主人公の成長の途中で終わってしまった感が出てしまっただけに余計に残念。

    中田氏や浅倉氏と言った個性的なメンツが脇を固めているのは演劇ならではの強みなだけに、
    もう少し伸びしろが欲しかったかも。

    ネタバレBOX

    日本にはほとんど生の情報が伝わらない、強盗の暗躍するパキスタン南部。

    死は免れない軍人の捕虜の心に比べ、
    (ひょっとしたら以前強盗団を何人も殺したかもしれない
    自分たちの「早稲田」のブランドを守るため、
    あるいは「日本人」としての誇りの為、
    まだ若いあったことも無い若者に残酷なコトバを投げかける大人たちのいる日本と言う国。

    若者が助かったことを喜ぶよりも、
    規範に外れたと言って死ねばよかったと人びとが口にする殺伐とした国。

    パキスタンに比べ、
    河に掛ける橋も、行く船も、
    すべてにおいて物資については遥かに恵まれているハズの日本人の心が、
    死にゆくパキスタン人に比べ、なんで草木も生えない砂漠のようであるんだろうか?

    マスコミの流す歪められた情報に踊らされて生きるひとたちは、
    父親が二度と会えない自分の小さな娘に渡す小さなハーモニカ以上のものを
    自分たちの子どもたちに手渡していると言えるんだろうか?(不安な社会以外の一体何を?

    その国は一見自由でいるように見える。
    でも、それすらも、操作された情報の中で皆が踊っているだけであるように見える。

    死ぬ危険はなく、栄養も設備も満足のいくものである。
    ただ、それは社会の規範にうまく適合している人に対しているだけで
    人びとはその規範から外れることを恐怖して萎縮して攻撃しあっているようにも見える。

    ・・実際には、人々の心はパキスタンに比べ、はるかに不自由だと思う。
    抗えない運命を「インシャーラー」と言って受け入れられる心も無いのだから。

    ドキュメンタリーの陥りやすい点として、
    対象のリアリティに引き込まれすぎて
    自分のパッションに上手くたどり着けないということがある。

    あと何年かして、
    演出家がパキスタンを旅したりなどしてから
    この作品を土台として別の作品を作り上げれば、
    もっともっと普遍的な作品が作れるんじゃないカナ、と言う気がした。

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    2013/07/31 23:35

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