シンポジウム SYMPOSIUM 公演情報 東京デスロック「シンポジウム SYMPOSIUM」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ポストドラマ
    「こんなの演劇じゃない」などと言うつもりは毛頭ない。
    テキスト(脚本)ありきではない演劇の可能性を、私は観たいと思っている。

    役者が役を演じるのではなく、生身の人間の存在と、その人間が紡ぎ出す言葉、そこに生起する空間こそが演劇であるという考え方に異論はない。

    ただ、この作品は、ただの「シンポジウム」でしかない。
    演劇的な仕掛けは多少あることはあるが、劇的な効果は生んでいない。

    語られた内容は、正直、導入に過ぎず、深まることはない。
    それでも、テーマとなっていることは、今の時代に自分(たち)はどう向き合うのかということなので、興味深くはあった。特に「当事者性」の問題など。

    また、埼玉県の富士見市で行われているという場所性を踏まえて公演が行われているという点はとても良かった。

    (満足度をはじめ★3にしましたが、作品の可能性を考えて、★4にしました。)

    ネタバレBOX

    それでも、良かった点はある。
    一般的にシンポジウムというと、偉い評論家が並んで発言するものが多い。
    この作品では、評論家も参加しているが、役者が自分の言葉をしゃべっている。
    役者は人前に立つことには慣れていても、自分の言語で話をすることには必ずしも慣れてはいない。簡単に言えば、素人なのだ。その点が面白かった。

    評論家は言語化を表現(職業)とする。その為、その言葉はもっともらしく聞こえはするが、できあいの言葉や論理が語られているだけということも少なくない。

    この作品でも、評論家の言葉よりも、役者の言葉の方がはるかに魅力的だった。
    わかった気になっていない、結論づけられていない、宙づりの生生しさがそこにあった。

    もう一点面白かったのは、
    シンポジウムが「演劇」とフレーミングされていることとで、
    観客は、一般的なシンポジウムだったら、話者の発言だけにしか集中しないものが、
    話者の表情や所作にも意識がいき、また話者だけではなく、他のパネラーが聞いている時の表情や所作などにも意識がいくということ。

    この点は実に面白かった。(と言っても、そういう観方をしている観客が何人いたかはわからない。おそらく多くはないと思う。)
    言葉として交わされているもの以上の豊かさがあった。

    ただ、議論として交わされている意味内容は、それほど面白いものではなかった。話が深まりそうになると、「時間です」ということで、そのテーマは区切られてしまう。「フィードバック」というテーマを振り返る時間もあるが、それほどその仕掛けが活きているとは思えない。

    それでも、「当事者性」についての話など、とても興味深いテーマではあった。

    話も、表情なども、北九州からきた沖田みやこさんが素晴らしかったが、
    所謂演技ではないので、彼女の人間性に惹かれたということか、、、
    これを「役者として魅力的だった」と言っていいのか、、、、
    でも、人はどんな場でも演技しているということから言えば、素晴らしい演技だったと言えるだろう。

    それに、韓国のソウルからきたマ・ドゥヨンさんの言葉・存在はとても印象的だった。
    今の日本社会を語る際に、韓国人の視点というのは、日本人の考え方や在り方を、言葉としても、存在としても、一気に相対化させる力を持っている。原発のことや参議院選のことなど、とても興味深かった。だが、マさんの言葉を他のパネラーはきちんと受け止めて議論を発展させているようには見えなかった。その点は特に残念だった。

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    2013/07/29 17:37

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