鴉よ、おれたちは弾丸をこめる 公演情報 さいたまゴールド・シアター「鴉よ、おれたちは弾丸をこめる」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ネタばれ
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    ネタバレBOX

    さいたまゴールドシアター【鴉よ、おれたちは弾丸をこめる】を観劇。

    作・清水邦夫、演出・蜷川幸雄のゴールデンコンビである。
    71年に蜷川幸雄率いる現代人劇場にて、石橋蓮司、蟹江敬三、真山知子、緑魔子で、アートシアター新宿文化で公演した舞台である。それをさいたまゴールドシアターにて2度目の再演である。

    物語は、二人の青年がチャリティーショーに手製爆弾を投げ込んだ罪で裁判にかけられている最中、彼らを救いに爆弾、ホーキ、傘などを武器に何十人という老婆たちが、裁判所を占拠し、自らの手で検事らを裁判にかけ、その場で刑を下していくのである。そして警官による強行突入の末、老婆たちと国家との戦いが始まるのである・・・。

    団塊世代が観たら泣いて、泣いて、悔やんでしまうほど、その当時、社会を変えられなかった、変えることが出来なかった事を嘆いてしまうほど無念に満ちた内容である。では何故、若者ではなく、老婆が裁判所を占拠するのか?
    それは国家を変える事が出来ずに、逃げてしまった当時の若者たちが、未だに悔やんでいる何十年後の末路の姿であり、それを今の若者に託そうと再度国家を占拠して、伝えようとしているのである。そして老婆たちは、今度は逃げずに死を覚悟して、国家に戦いを挑むのある。そしてあの樺美智子の様に、最後は逃げずに全員殺されてしまうのである。
    今作の最大の見どころは、団塊世代以上の素人老人俳優たちが演じる事によって、なんともいえない程の狂気をはらんだ芝居で、当時の無縁さを演技ではない、実体験を通して演じる事によって、凄みを感じさせるくれる事だ。全く下手でしょうがない演技ではあるけれど、それをプロの俳優が演じるという事では決してなし得ない、人生経験という最大の武器を使って、国家でなく、観客に立ち向かっていく姿には誰もが涙してしまった。そして今作の演劇としての最大の面白さは、最後に老婆たちは国家に皆殺しにされたしまった瞬間、その無念さを未だに持ち続けているという証を、当時の若者の姿に戻り(早変わり)、そして死に向かっていくというラストで締めくくられるのである。その瞬間はまさしく生の演劇的興奮の絶頂であり、時代を感じさせてくれた最高の舞台であった。まさしく伝説であり、時代に残る傑作舞台である。

    蜷川幸雄は唐十郎、寺山修司、清水邦夫の戯曲を手掛けるとどれもが面白くなるのに、シェイクスピアだとさっぱりつまらんというのはどういう事なのか?
    その辺りは世界のニナガワと認めたくないのだが・・・。

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    2013/06/23 17:37

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