満足度★★★★
演劇における想像力
想像力による思い込みと思い違いによって起きる出会いと別れの物語が、演劇ならではの見立ての手法を用いて、独特のピュアな世界観で描かれていました。
追手に追われている(と思い込んでいる)男のエピソードと、生き別れになったその妻と息子のエピソードが、前半では学芸会的なテイストゴチャゴチャと描かれ掴み所がない感じでしたが、想像の中で会話が出来た化け物が、想像されることを拒否して動物的な鳴き声しか発さなくなるシーン辺りからコミカルな雰囲気の中に切なさが浮かび上がって来て、いつの間にか強く引き込まれていました。
1つの物に違う役割を与え、シーンが変わると瞬時に別の物として扱われる手法が楽しかったです。見立てに用いていた物が倒されたり崩壊することによって、その物自体に戻る場面が何度かあり、インパクトがありました。
途中でままごとをするシーンがあり、想像力を使って行う遊びと演劇との相似性が端的に描かれていて印象的でした。
普通の演劇ではBGMは劇中の登場人物達には聞こえていない設定で、シーンの雰囲気を高める効果として用いられるところを、この作品では歌モノに関しては小道具的に扱われていて、登場人物達が音楽が流れていることを認識して反応するのが独特でした。そのことによって、歌モノを使うときにありがちな「ダサさ」が無くなっていました。
ダンサーの水越朋さんは身体表現がメインの役を演じるかと想像していたのですが、普通に台詞を喋り(声も良かったです)、ロロの世界観に合っていてチャーミングでした。もちろんダンスの見せ場もあり、幸福感溢れるダンスが素敵でした。
被り物で表情が見えず、台詞の半分以上は鳴き声だったにも関わらず感情が伝わってきた小橋れなさんの演技も魅力的でした。
ケラさんをゲストに迎えたアフタートークも内容が充実していて楽しめました。