満足度★★★
夜の部鑑賞
歌舞伎の今後を担う、人気の若手役者が揃った公演で、異なるタイプの3作品を通じて、それぞれの役者の魅力が発揮されていました。
『将軍江戸を去る』
最後の将軍となる徳川慶喜と開城を迫る若者との対話劇で、ほとんど動きがなくて視覚的には地味ですが、激動の時代に生きた人達の思いが重厚なドラマとして描かれていて引き込まれました。比較的新しい作品のため、様式性があまり感じられず、照明もドラマテイックな演出となっていて、歌舞伎らしさがあまり感じられませんでした。
中村勘九郎さんの熱血漢っぷりと市川染五郎さんの威厳のある態度の対比が印象的でした。
『藤娘』
中村七之助さん一人舞台の舞踊で、藤の花が咲き誇る中を可憐に踊る姿が美しかったです。爽やかな雰囲気で良かったのですが、生真面目な感じが強く、もう少し艶っぽさが欲しく思いました。
『鯉つかみ』
姫が恋焦がれる男に化けてやって来た鯉の精を本物の男が退治するという、荒唐無稽な物語でしたが、大量の水や、宙乗り、舞踊、早替わり等、ケレンが盛り沢山で楽しめました。雨が降る池の中で鯉と格闘する場面は豪快に客席まで水を撒き散らすのが楽しかったものの、引っ張り過ぎるように思いました。
中村壱太郎さんが演じた姫がコミカルで可愛らしかったです。転換中に定式幕の前に立ったまま三味線と長唄が演奏するのが格好良かったです。