匿名家族 公演情報 劇団フルタ丸「匿名家族」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    チャレンジング!大成功!
    文学的味わいがありました。

    ネタバレBOX

    最初、写真などで目の部分を隠す黒い線のようなサングラスをかけた人たちが登場したので、これが匿名の意味なのかと思いましたがそうではなく、息子、父母、祖父母という主人公の息子から見た直系家族を演じる役者が存在せず、あたかもそこにいるかのように周囲の人々が立ち振る舞う形式で、しかも名前のところにピーッが入って苗字すら分からないという、ここに匿名家族たる所以がありました。とても斬新でした。

    先生の存在が大きかったです。役割としてもそうですが、岡見文克さんという中年の役者さんが加わったことで全体が引き締まりました。

    大学を出てからも気を遣ってくれる先生なんて現実に存在するのか分かりませんが、文学の世界では如何にもありそうな感じでした。先生は最初、彼の小説には救いがないと指摘し、修正後も愛がないと指摘して引導を渡しました。もっともらしい理由付けですが、彼には小説家としての才能が無いのか、あるいは実家の実情を勘案した上での発言なのか本当のところは不明です。

    恐らく、先生の言葉が彼に決定的な影響を与えたと言うよりは、先生の言葉を受け入れることによって彼は自分の揺れ動く心理に決着をつけ、実家の養豚場を継ぐ行動を正当化させたかったのでしょう。

    そして、最後はやっぱり家族は家族です。大学院を出たどんなに優秀な社員でも、形式だけの株式会社、ほとんど個人営業では婿養子にでもならない限り跡取りにはなれません。当然の現実です。

    それにしても、養豚場における動物虐待という話がもう一つのテーマでしたが、命をいただく身として複雑な思いになりました。

    意表を突かれた回り舞台も効果的でした。薄い壁を隔てて隣室の104号室があるのではなく、壁の向こう側には実家があるということです。

    ところで、事務所兼居間に出入りするときに、靴底の接する玄関の土間に直接足を置いて長靴や靴を脱ぎ履きしていましたが、養豚場ということを考えるともう少し丁寧に脱ぎ履きするのではないかと思いました。

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    2013/05/14 10:38

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