満足度★★★
椅子だけで表現
韓国にフィジカルシアターの公演で、椅子だけを用いて様々なシーンを表現する手法がエネルギッシュで印象的でした。
『ヴォイツェック』は先鋭的かつ陰鬱な演出で上演されることの多い戯曲ですが、このカンパニーのヴァージョンは意外とエンターテインメント的な面が強く、社会とヴォイツェックの関係よりも、ヴォイツェックと妻の関係に焦点を当てていている様に感じました。
椅子だけで小道具やセットを表現し、物語上で重要な意味を持つイヤリングやナイフも小物として用いないで展開してましたが、身体表現が的確で、動作だけで何を持っているのかがはっきり分かりました。
数秒の暗転毎に椅子や役者の配置が変化しているのが鮮やかで魅力的でした。ユニゾンのムーヴメントや台詞のタイミングが揃っていて技術の高さを感じました。
ミニマルな道具立ての演出のわりには、椅子を他の物に見立てるという、舞台ならではのマジカルな味わいが期待していた程には感じられず、直接的な表現が多かったのが残念に思いました。冒頭のバラバラになる椅子のような隠喩に富んだ演出をもっと見せて欲しかったです。
台詞は韓国語の他に英語と日本語で話されていて、ポストパフォーマンストークでの演出家の話によると身体表現を見てもらいたいので、キーになる台詞は字幕を見なくて良いように、上演する国の言葉で話すことにしているとこのことで、一理あると思いましたが、片言気味に話される為にあまり感情が伝わって来ないデメリットもあって、諸刃の剣に感じられました。
甲高い声を出したり、バタバタと動き回ったりする、稚気を強調した表現は悪い意味で安っぽく感じ、好みの表現ではありませんでした。