韓国現代戯曲ドラマリーディングVol.6 公演情報 日韓演劇交流センター「韓国現代戯曲ドラマリーディングVol.6」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    『海霧』『白い桜桃』
    『海霧』
    経済的な危機にある漁船の乗組員たちが、
    密航者を運搬するビジネスに手をつけた。これで一獲千金!のはずが、思いも寄らぬ悲惨な事態に。

    船の上、というまさに密室空間で起こる、逃げ場のない惨劇、
    行き詰まる密閉感。
    まずは、ハンパなく良く出来た戯曲であった。
    人間同士が信じ合えなく、わかりあえなくなっていく、
    ユージン・オニールの海洋物を彷彿とさせる作りだ。

    その戯曲を、奇をてらわず、体当たりの真っ向勝負での演出。
    リーディングなのに…あるいは、リーディングだからこその空気の濃密さ。
    語られていく言葉に、しっかりと引き込まれ、集中させられる。
    リーディングを観て、
    面白かった!という手応えを感じたのは実に久しぶりだった。

    やってる側も、観てる側も、
    最大限の集中力・表現力・想像力を駆使しなければ成り立たない表現芸術。
    垂れ流しで芝居を観てしまうよりも、よっぽど有意義でクリエイティブな時間・空間が、
    そこには確かに存在する。


    『白い桜桃』
    同じく、韓国現代戯曲ドラマリーディングの今年のラインナップ。
    こちらは『海霧』とは対照的に、日常を描くタイプ。
    チェーホフみたいな感じだろうか。
    山里の住宅を舞台に交錯する人間模様。

    演出面でも、ほぼ動きのなかった『海霧』とは対照的で、
    身体表現をふんだんに取り入れた作り。
    全員で一カ所に集まってみたり、わらわらと移動したり。
    リーディングと呼ぶには難があるんじゃないかしらと思ったが、斬新。
    さらに、様々な楽器の演奏を組み込むことで、
    また、出演者の多様な年齢も相まって、
    舞台上を様々な音色が飛び交う作りだった。
    特に後半、下総源太朗さんの存在感凄まじく。印象的だった。

    この『白い桜桃』に『海霧』、そして私が出演させていただいた
    『朝鮮刑事ホン・ユンシク』
    が加わり、2013年の韓国現代戯曲ドラマリーディングという催しでした。
    3演目とも観た人に、是非感想を伺いたいものだ。

    リーディングの可能性、というものはどこまでも無限に広がっている。
    ただ、小手先の目新しさにのみ終始してしまうと、
    どうしても言葉・本が疎かになる。
    リーディングにとって、それは本末転倒なのだろう。
    演者と観客のセッションこそが、リーディングの最大の魅力なのだろうから。

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    2013/05/03 00:21

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