緋色の町 公演情報 ★☆北区AKT STAGE「緋色の町」の観てきた!クチコミとコメント

  • つかこうへい 原発支配論ーフクシマ+オキナワ
    北区つかこうへい劇団の後継団体として、東京都北区を中心に上演を続ける北区AKT  STAGE 。

    今回は架空の王国「福の国」を巡る、金=富と悪霊=代償のドラマである。

    さすが、劇作家•つかこうへいのDNAを受け継ぐ劇団だけあり、必死のコメディやダンス•パフォーマンスが散りばめられるものの、核の部分は政治に翻弄される人間ドラマであった。

    「金の鉱山が発見され  この国は豊かになったが、その悪霊で死んでいる人がいる」

    「それでも、金が見つからなければ、私たち は飢えていただろう。振り返ってはダメ」


    この『金』を、『原発』に置き換えたら どうだろう。いや、むしろ、制作者の意図において、このことは 物語の前段階として描かれている。


    『福の国』は、『福島県』か。
    日本で原子力発電が進んだのは1970年代、50年代後半から中曽根康弘元首相らが軍事用の転化を視野にいれ積極的に動いた結果だった。
    中曽根氏は戦前の内務省官僚出身である。戦後、日本民主党から出馬し、引退まで対外的には親米派、国内的には風見鶏のごとく政局を読む政治家として振舞った。


    中央が金を出し、地方が潤う。
    地方が犠牲になり、中央が成り立つ。


    その構造は、1938年の戦時下体制前でも、現代の日本社会でも変わっていない。
    戦時下体制以前、初の対外全面戦争となった日清戦争時、戦地に送られたのは地方の農家、特に次男、三男であった。

    内務官僚の中曽根氏が、そうした中央地方関係を理解していないはずがない。当時の内務省は現在の総務省とは規模が違う。


    日本で初めて、商業用の原発が建設されたのが福島第一原発だった。明治時代、福島県は  喜多方事件(1882年)などが頻発する反中央が際立つ地域であった。
    戦時下を経ても、そうした姿勢は同じまま。
    中曽根氏を中心とする原発勢力の政治家が初の商業原発立地地域を福島県の地に設定したのは、原子力の軍事用転化のみならず、中央に従順な地域へ手なづけることにあったのではないか。

    東京電力は元々、日本発送電(1939年設立)が1951年に分離し継承(再)された会社だ。
    九州電力、関西電力など、9の地域電力会社へ細かく地域ごとに分社化した。(1社別形態)
    では、なぜ、東北地方の福島県なのにもかかわらず、下半分は東京電力の管轄となったのか。
    別に福島県の浜通りと言われる地域が反中央の傾向が際立っていたわけではないが、原発建設が国会で議論される前に  このような「線引き」がなされたということは、やはり中央地方関係の政治的な意味合いがあったのではないかと思う。
    アフリカの地図は旧宗主国が話し合い決めた。異様な国境線をしており、ウガンダやスーダンなどで民族単位の紛争が生まれる。

    福島県の電力会社管轄区域も、政治的な理由で決められたと考えるのが自然だ。

    中曽根氏を中心とする原発勢力は、電源三法を通過させ、電源立地地域対策交付金の名の下(制度変更あり)、1974年以降、福島県の双葉町などへ多額の金を与えた。
    福島県全体の交付実績は、累計2969億円にのぼる。県内のGDP76669億円(2008年実績)に比べると低いかもしれないが、全て電気利用者の負担だ。
    私たちが普段の生活の中で電気を使う  その電気代からも原発用の税金が拠出されている。震災前のデータで、電源利用対策として1kWhあたり
    18.5銭を、電源立地対策として1kWhあたり19.5銭を負担。また、電源開発促進税として1000kWhあたり375円(販売電気)が掛かる。

    目的は、「発電用施設周辺地域整備法の規定に基づく交付金の交付発電用施設の設置及び運転の円滑化に資するための財政上の措置」と説明している。
    「運転の円滑化」とは何を指すのか。公共施設を建てることで、反対派住民を町内から退けること(少数派にする)を意味しないか。

    以上、福島県が発表している「福島県における電源立地地域別対策交付金等にかんする資料」に基づき、紹介した。


    日本には停止中の機も含めると、九州電力から北海道電力まで全国に54機の原発が設置されている。世界第三位の設置数だ。

    だが、沖縄電力、つまり沖縄県には原発が設置されてはいない。
    通常、原発は運搬や冷却システム等の理由から海辺の地域に建設される。当然ながら福島第一原発も そうだし、御前崎市の浜岡原発も 海辺である。

    では、四方を海に囲まれた沖縄本島に原発がないのは、どうしてか。

    答えは、米軍基地が 土地の 20%を占めるからだ。
    中国の移動式短距離ミサイルは、台湾を常に狙っている。この問題を巡り、1990年代に台湾海峡の危機が発生した。
    地図を見てみれば、少し右にそれると沖縄本島が そこにある。米軍がグアムに基地を移設したのも、中国の短距離ミサイルの精度、飛行距離が伸びたことが要因だと、拓殖大学教授の森本毅元防衛相は考察している。

    もし、沖縄に辺野古原発が あり、ミサイルで破壊された場合、沖縄の米軍は壊滅的な打撃を被る。何より、数千の兵士が被曝してしまう。
    米国は、このような事態だけな避けなければならないと考えている。だから、沖縄には原発は造れない。

    原発が全国に54機も建設された表面上の大きな理由が、CO2を大量に排出する石炭や石油などの火力発電に代わり原子力エネルギーへ代替することで、『クリーンなエネルギー』を進めていこう、というものだった。米国のオバマ大統領も、基本的には そうした考えだ。

    では、沖縄電力の発電割合は どうなっているか。

    石炭  76%


    石油   22%


    新エネ   2%


    (2011年  実績  沖縄電力HP)



    透明な海が汚れてしまいそうな、CO2排出のオンパレードである。
    原子力発電、ダムによる水力発電が可能な他の電力会社に比べると、非常に環境に不適応だ。
    8年後に液化天然ガスを29%まで増やすスケジュールを公表しているものの、尖閣諸島の行方によってはガス田開発が座礁し、数字を達成できないことも考えられる。

    先に見てきたように、原発は中曽根康弘元首相をリーダーとする原発勢力が国策として進めてきた。
    であれば、借りに沖縄電力に電力不足が生じなかったとしても、中央地方関係を考慮すると建設の旗を上げるのが普通である。
    しかも、沖縄県は地震が圧倒的に少ない。IT企業が集まり、地震保険は県民にとってポピュラーではない。

    一方、福島第一原発の電源喪失は、津波だけではなく、地震によるものではないか、という疑いも出てきている。
    川内博史元衆院国土交通委員長は、今年の3月14日、28日の二回にわたり福島第一原発の屋内に立ち入った。(東京新聞  2013年4月11日)
    東電関係者以外で屋内に入るのは、初めてのケースだった。
    首相、大臣、評論家が施設付近に入ったが、屋内は難しいのだ。
    なぜか。川内氏は11mSvを被曝した。パイロットやキャビンアテンダントら飛行機従事者が年間に受ける被曝量3mSvをはるかに超す。放射線の被曝は、一時的な方が身体にダメージを与える。

    被曝を顧みず、屋内に立ち入った川内氏が「地震の破損で電源が喪失し、循環 冷却ポンプが作動しなくなった可能性」を上げた。これは極めて重い証言である。

    震度6強で、原発が水素爆発を起こし放射能を放出したレベル7の事故=チェルノブイリ級(国際原子力委員会判定)が  発生したなら。南海トラフトの3プレート同時大地震が襲う確率は高い。再稼働など言語道断である。

    地震頻発地域と、地震の少ない地域では、どちらが原発に適してるか、という問いには原発保持派も含め後者だと回答するだろう。

    であるなら、日本では最も地震が少なく海に浮かぶ沖縄本島に原発がないのは、どうしてか。オイルショック前に等しい沖縄電力の電力供給の構成をみれば、原発を建設する方が普通だ。

    だが、土地の20%を占める米軍基地を放射能からガードするために、原発保持派の彼等は そこに建てようとは決してしない。


    原発は、既得権益グループが明治以降の中央地方関係を保持するためのシステムという一面もある。
    だから、最初の原発建設地は歴史的に中央と距離を置く、福島県だった。

    原発がない沖縄県では電源対策費を与えることができない。
    では、既得権益グループは  どのようにして、沖縄県の既得権益層を含め住民に『金』をやるか。
    沖縄振興費である。
    2000年の省庁再編、北海道開発庁は国土交通省の北海道開発局に吸収、及び縮小された。ところが、沖縄開発庁は内閣府の内部部局=沖縄振興局として さらに中央へと進出した。
    最近では一部国会議員から、「沖縄バカンス特区」が提唱されている。いずれにしても、県民や首長、県会議員の考えを通りこし、「中央が地方=沖縄になにかしてやろう」といった思考だ。

    福島にしろ、沖縄にしろ、中央が『金』を与えるのは、反中央的な機運を抑え込むためである。
    沖縄県では辺野古移設反対で保守系の仲井真知事を含め県民が声を一つにしている。中央は困惑だ。
    しかし、福島県の場合、とくに第一、第二の原発が立地する浜通りは 自民党が  比較的だが 強い保守地盤である。明治以降、喜多方事件にみられるような独立主義の地域性は失い、典型的な地方県になった。
    原発に警鐘を鳴らした双葉町長は、震災後、町議会から不信任案を可決させられた。非原発派の首長は、県民から、議会から、他 色々な手順で政治生命を追われている。
    福島県に限っては、中曽根氏らが意図した中央地方関係の強化が うまくいっていたのではないか。
    原発の最終廃棄物処理の誘致先は、青森県六ヶ所村である。(建設中)中央が劣化ウランの一時保管先を求めているのは事実だろう。だが、その地域=青森県を支配する手段でもあるのではないか。

    それぞれの地域が自立し、地域のことは地域で決めることが基本である。他方、公選されたはずの首長さえ、既得権益グループに追いやられる歴史がある。
    どうすれば いいのか。
    静かに抵抗したうえで、女性や子供に上から目線なのは承知だが教育しなければならい。
    既得権益グループは女性、子供にターゲットを絞り、行政やメディアをフルに使い 国策の同意者とするケースが見受けらる。
    であれば、市民団体やNPOが政治と関わりの薄い女性、子供を対象に『連帯』を呼び掛けるのである。
    沖縄県の平和運動や、初期の脱原発は まさしく世代や性別を超えた『連帯』があった。
    それでしか、利権で結び付く『共同体』に地方の人々が抗し、また交渉することなどできまい。





















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    2013/04/27 23:33

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