DOLLY ~Faure:Dolly,op.56~ 公演情報 年年有魚「DOLLY ~Faure:Dolly,op.56~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    作り手の仕掛けが生きる
    最初舞台の風景を追うだけですが、
    次第にその仕掛けが観る側に伝わってきて。

    観終わって、女性たちの時間の内側が
    普遍と共に鮮やかに伝わってくることに瞠目しました。

    作り手の意図があからさまに示されて。
    こんなにもしなやかに機能する・・・。

    ほんと面白かったです。

    ネタバレBOX

    最初はピアノの演奏に続くシーンを追っていくだけ。
    ありふれた女性たちの集いの風景が、
    さりげなく描かれていく。
    10人の女優たちそれぞれに個性があって、
    それぞれのロールがしっかりと印象に残って。
    そのなかに、男がちょっと入り込みにくい
    女性たちの時間が組みあがっていく。

    そして、物語は始点に戻り、
    同じシークエンスが、
    ロールを変えて繰り返される。
    役者と役名はそのままに、
    一方で個々がそのシークエンスで担う役割のみ入れ違って
    同じトーンで舞台上に組がっていきます。

    さらには、3度目、ロールの変化に加えて
    舞台上のトーンまでが塗り替えられて・・・。
    そのきゃぴきゃぴしたデフォルメが、
    演じる役者たちに合っているかといわれると
    少々シュールな部分がないわけではないのだけれど、
    だからこそ、舞台に組みあがるものの
    ありようや普遍性はより鮮やかに伝わってくる。

    4度目には、もはや、
    色調や其々のロールが担うものすら削ぎ落され
    演じられる4度目のシークエンスに、息を呑む。
    最初は女性たちのありふれた時間の風景が、
    モノトーンの中に、骨組みを露わにし、
    観る側の眼前に揺らぐことなく存在して・・。

    そこには描かれた時間の本質を切り出す
    作り手の慧眼があり、
    それらを与えられた条件の中にぶれることなく
    その肌触りを紡ぎあげ、描き出す、
    役者たちの演ずる力のしなやかさを深く強く
    感じることができて。

    5回目に演じられるシークエンスは
    最初と同じに演じられて・・・。
    でも、そこから受ける印象は
    もはや冒頭とは同じではない・・・。
    男に少々理解しえない
    女性たちの時間のベースや
    距離感やロールのやり取りや、収まりのつかなさの感覚までが、
    裏付けとともに
    細微に、しなやかに伝わってきて。

    観劇は初日でしたが、
    作り手が当パンに書いているように、
    それぞれに描かれるものの精度は
    役者たちによってさらに研がれていく予感もあり、
    単なるワンアイデアの提示のツールにとどまらない、
    名付けられた10のキャラクターの個性にも
    この役者たちが演じ込むことで
    さらに広がるであろう魅力もあって。

    観終わって、作り手の企みにガッツリ嵌ったことを悟り、
    ちょっと悔しくさえ思えて(超褒め言葉)。
    また、この仕組みの中で、役者達それぞれから、
    あざとさを持たずにしっかりと伝わってくる演じる力を改めて実感し、
    強く惹かれたことでした。

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    2013/04/13 16:08

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