キャッチャーインザ闇 公演情報 悪い芝居「キャッチャーインザ闇」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    圧倒的なデッサン力に裏打ちされた心風景
    3月23日ソワレにて再見。

    最初は五感から伝わってくるものに導かれ、
    組みあがっていく世界のニュアンスに染められ、
    さらにそれらが解け、束ねられていく中に、
    心に去来し思索し霧散していく想いのありようが
    あからさまに伝わってくる。

    作り手の心風景のデッサン力と
    それを具現化する役者たちの底力に圧倒されました。

    ネタバレBOX

    物語への導き方がとてもしたたか、
    冒頭の闇の気配は
    観る側の耳をそばだたせ、
    肌で感じさせ、五感を研ぎ澄まさせる。
    そして次第に闇が解けて浮かび上がるそのミザンスに
    したたかに閉じ込められてしまう。

    解けるように現出する三つの世界のそれぞれのニュアンスが、
    異なるベクトルに次第に形作られ、
    その一つづずつが歩み、
    舞台を広げていきます。
    個々の世界に紡がれる物語は、
    それぞれが奥行きを持ち
    とてもルーズに互いを照らし、
    切っ先を研がれつつ広がっていきます。
    単純に筋立てが語られるのではなく、
    ロールたちそれぞれが物語の顛末を織り上げるなかに、
    表層に留まらない、
    それぞれの世界の呼吸や鼓動や肌触りが描き込まれ、
    観る側を惹き込んでいく。
    でも、終盤に、舞台上にある様々な概念が熟しても、
    満ちても、溢れても、混沌に至っても
    それを感じ見つめる視座がしっかりと貫かれ残って。

    役者たちの、身体の切れやニュアンスの立ち上がりの早さと深さ、
    さらには単にそれぞれのロールを
    物語に織りいれるにとどまらない、
    其々の切先とともに観る側に刺さりこむようなテンションにも
    深く捉われる。
    衣装も、観る側の目を奪い、
    キャラクターが纏うものを際立たせる。
    美術が描き出す世界のありようや揺らぎ、
    さらにはラストの闇が崩れ落ちるような感覚を導く外連に息を呑む
    レーザーなども使い、場の色をメリハリをもって浮かび上がらせる 照明は、観る側までも染め上げていく。

    求める気持ち、苛立ち、表裏の感覚、
    見えるもの、隠れるもの、浮かび上がるもの、
    広がるもの、滅失するもの・・・、
    気が付けば、、
    たとえば眠れない夜に心が澄み、
    記憶の扉から漏れ出てくるものに想いが広がり、
    自らの手を離れて心を揺らぶられていくような感覚に嵌りこみ、
    振り返り、思索の坩堝の中で、
    満ちることのない様々なものに想いを馳せるような・・・、
    あるいは、若いころの想いが時間の舫いを解かれて
    更に歩み続けている、
    自らを見つめるような感覚に深く浸されて。

    激しい昂揚のあと、
    全てが世界に収まった時、
    なんだろ、不思議な慰安があって・・・。
    自分が歩んできた記憶に、
    舞台のエピソード達から削ぎだされた
    風景とその顛末がつながれておりました。

    この作り手だからこそ切り取りえたであろう感覚に深く捉われ、
    それをデフォルメし描き出す、様々な創意に舌を巻いたことでした。


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    2013/03/25 05:57

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