満足度★★★
声の存在感
1995年のイランのテヘランでプライベートな読書会で『ロリータ』を読む女性達を描いた小説『テヘランでロリータを読む』を舞台化した作品で、洗練された演出によって声の魅力が引き立てられていたのが印象的でした。
舞台上には登場しない「先生」と共に行われる読書会を通して宗教・文化・社会・女性の生き方について議論する様子に『ロリータ』の場面が重ね合わされながら展開し、抑圧された女性達の思いが伝わって来ました。
床置きの照明器具で境界を定められたアクティングエリアを客席が4方から囲み、1冊の本とサングラス以外には小道具も、椅子やテーブル等の家具も用いず、音響も全く使用しないという物理的には簡素な設えでしたが、役者達の演技によって様々なシーンの情景が浮かび上がっていたのが良かったです。
丁寧に作り込まれた脚本・演出・演技ではあったものの、馴染みのない文化圏の話だったせいか、物語の世界に入り込みにくく感じ、110分の上演時間が少し長く感じました。
キーワードを解説した資料や人物相関図が用意されていて、開演前には黒澤世莉さんがイランに行った話もしていて、観客に楽しんでもらおうとするホスピタリティーを感じました。