満足度★★★★
ヘドウィグの原点
山本耕史が素晴らしかった。 三上版の派手さ、賑々しさも客をいじることも無い。しかし、考えてみれば、ヘドウィグは「世界的に無視される」存在なのである。見る人を思わず引かせる外見。しかし、舞台の進行とともに観客は彼女の内面に引きずり込まれていき、その孤独と哀しみに共感し、再生を見届ける。いかつく、背が高い山本のけばけばしい姿に驚く間もなくいきなりの「TearMe Down」で否応無くその世界に引きずり込まれる。時に寂しく、時に愛らしいヘドウィグ。そして、ラスト2曲の彼は神々しいまでに透明で美しい。カタルシス。
ネックは英語で歌われ、字幕がつかない事。賛否両論なのはうなずける。しかし、もともと英語で書かれた曲に無理矢理載せた日本語を大音量で歌われたとて聞き取れまい。確かに初見の人にとっては解り難いものになってしまっただろう。しかし、外国製ミュージカルはこれからも多く翻訳上演されるだろう。そして、必ずそこには日本語歌詞の問題が立ちはだかる。そこに一石を投じる意味でもこの試みに非難を恐れずに踏み切った事は評価されて良いと思う。 私的には何も問題は無かったからそう思うのかもしれないが。 中村中も良かった。声に透明感が合って心地良い。最後のドレスは、美しいがドラァグクイーンにはとても見えない。バンドもビートルズみたい。何故?