日本橋 公演情報 松竹「日本橋」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    全てが美しい
     泉鏡花が大正三年に発表し、のちに自ら戯曲化するほど鏡花自身も愛していた名作。
     今回の公演は、常にあくなき探究と研鑽を積み重ね、芸と美を兼ね備えた坂東玉三郎が演出、そして実に二十五年ぶりに主役の芸者・お孝役に挑戦している。
     その舞台の玉三郎は、言うまでもなく立ち居振る舞いが絶品で美しい!
     キャステイングも素晴らしい。
     対役の芸者・清葉の高橋恵子も、しっとりと癒しの演技で嫋やかに和の美を醸し出している。
     他の出演陣も充実し、鏡花独特のとにかく美しい台詞で綴られた演技で、その一篇一篇の詩が、舞台を増幅した映像の拡がりを持って脳裏に浸透してくる。
     全てが美しい舞台だった。

    ネタバレBOX

     ものがたりは一人の医学士を巡り、二人の芸者お孝(坂東玉三郎)と清葉(高橋惠子)そして彼らを取り巻く登場人物たちが織りなす人間模様を鏡花独特のとにかく一篇一篇の美しい台詞で綴られた舞台。
     

     大正のはじめ、日本橋には指折りの二人の名妓がいた。稲葉家お孝(坂東玉三郎)と、瀧の家清葉(高橋惠子)である。しかしその性格は全くの正反対で、清葉が品がよく内気なのに引き替え、お孝は達引の強い、意地が命の女だった。
     医学士葛木晋三(松田悟志)には一人の姉がいたが、自分に似ている雛人形を形見として残し、行方知れない諸国行脚の旅に出てしまった。
     その雛人形に似ている清葉に姉の俤を見て思いを寄せる葛木は、雛祭の翌日、七年越しの自分の気持ちを打ち明けた。
     しかし清葉は、ある事情から現在の旦那の他に男は持たないと誓った身のため、葛木の気持ちはよく分かりながらも、拒んでしまう。
     葛木は清葉と傷心の別れの後、雛祭に供えた栄螺と蛤を一石橋から放ったところを、笠原巡査(藤堂新二)に不審尋問された。そこへ現れたのは抱妓のお千世(斎藤菜月)を伴ったお孝であった。お孝の口添えで、葛木への疑惑は解け、二人は馴染みになった。彼女は清葉と葛木の関係を知りながら敢えて自ら進んで葛木に身を任せようとした。これは清葉に対する意地であった。
     しかし、お孝には、稲葉家の二階に住みついた間夫・五十嵐伝吾(永島敏行)がいた。
     共にかなわぬ胸のうちを抱え苦しむお孝と清葉の二人の因縁を軸に、せつなく情実的に描きながら、美しくも悲劇で結される最終章へ向かって展開していく。

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    2012/12/25 00:05

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