楽園 公演情報 モダンスイマーズ「楽園」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    「今」と「現在」、子どもの時間
    観客の記憶と絡み合い、甘くて苦いノスタルジーとともに切なさが、要所要所ですうっと現れてくる。

    ネタバレBOX

    小学生が秘密基地に転校生を招いた数十分を描く。

    小学生同士のヒエラルキー、裕福、がポイントになっている。
    それは危うい関係であり、ちょっとしたことですぐに崩れてしまう。

    そして、大人が小学生を演じるということを見事に取り入れた作品でもある。

    まあ、演劇を観るほうとしては、「小学生です」と言われれば、60代の人であってもそう見ていくのが普通ではある。中には違和感が最後まで拭えないものもあるが、トム・プロジェクトの公演の『エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ~』なんていう凄いのもある。たかお鷹さんが、全編小学生を演じていて、自分より年下の女優さんに「おばちゃん」なんて言うのに、まったく違和感がないのだから。

    この舞台の不思議なところは、全員小学生なのだけど、衣装が変なのだ。
    「?」という疑問が頭の上にあるままストーリーは進んでいく。
    「今、小学生なの?」「何かふざけているの?」と。

    中盤から衣装、つまり舞台の上で見えているのは、「現在」の彼らということがわかってくる。今、舞台の上で行われているのは、その彼らが小学生だったころの話であり、その彼らが大きくなるとこういう仕事をしている(あるいはしていない)、こんな風貌の大人になっている、ことを見せているのだ。

    だから、大人が小学生を演じている、ということを、リアルなまま行えるということなのだ。

    小学生の彼らの「今」に、「現在」の彼らの様子が字幕で現れてくるいろいろあってフリーターをしている者、警官になっている者など、小学生のときの彼らの言動とのギャップだったり、変わらなかったことだったりを伝えてくる。

    これは、時間を短縮して見せているのだけど、例えば、小学生や中学生ぐらいの、まだ未来がどうなるかわからない時代を一緒に過ごしたクラスメイトが、クラス会で久しぶりに会って会話するのと似ている。
    「え、あいつが今こんなことを!」とか「やっぱり、そうなると思っていたよ」とか、いろいろな感想があるわけで、小学生のころにその芽があったり、見落としていたり、なかったりということを体験するわけだ。

    それが舞台の上では字幕ど「現在の彼らの姿」で一瞬にわかるという仕掛けだ。
    クラス会の経験は多くの人があるだろうから、そうしたベースとなる経験が、この舞台を観ていて引き出されることで、面白さが倍増するのではないだろうか。

    自分のクラスメイトのことなどを思い出したりして。

    そういう面白さがあるし、さらに、裕福な少年が仲間の上に立っていて、転校生も自分の下に入れようとするのだが、思わぬ反抗でその関係にヒビが入ったり、仲直りしたり、という、いかにも小学生のころにありそうなエピソードも楽しいし、切ない。

    結局のところ、こういう組織とか仲間とかの上下はもちろん、つながりの関係は、小学生のときと大して変わっていない、というつこにも気づかされるのだけど。

    甘くて苦いノスタルジーが、観客の記憶とうまく絡み合っていく、といううまさがある。

    例えば、いじめ的なエスカートの仕方の怖さと、それに対する仲間のブレーキ感などは、同じ体験をしたことがなくても、自分の記憶を引き出したりすることで、妙にリアルなのだ。

    ヒロインを深沢敦さん演じていた。ちょっと飛び道具的かな、と思っていたがそれは違っていた。
    どこのクラスにいもいるような、ちょっと生意気で勘違いをしている女子がそこにいた。

    彼女(深沢敦さん)は、登場したときから足が悪そうで、片足を引きずりながら、階段の上り下りにも苦労していた。
    舞台にある階段はかなり急なので、てっきり、稽古か本番で転んで怪我をしたのかと思っていたら、そうではなかった。
    物語の終盤にその理由がわかる。

    片足を引きずっていたのは、この、小学生のときの出来事が原因だったということ。

    さらに、その後、彼女が、痛い足を引きずって階段をあるく姿。
    その姿とラストエピソードには泣きそうになってしまった。
    深沢敦さんは見事なヒロインだった。

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    2012/12/19 07:12

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