満足度★★
良くも悪くもフランス的
フランスの作家による、少年の成長を描いた物語で、タニノクロウさんならではのエログロ感のある演出が魅力的でしたが、全体としては主題がハッキリせず、ぼやけた印象がありました。
太っていることをコンプレックスにしていた男が母を圧死させかけたことを機にダイエットに励み、その痩せっぷりから有名人になるものの、幼馴染みとの愛情を優先して大人の世界から抜け出ようとするというストーリーでしたが、少年の言動に共感できず、ドラマとしての盛り上がりも弱く感じられました。多用される比喩も日本語だとあまりしっくりと来ない感じがありました。
世界に拡がるアメリカ大衆文化に対しての皮肉が感じられるエピソードがいくつかあったのがいかにもフランス人の作品らしかったのですが、物語の流れに対して唐突な感じがあって違和感を覚えました。
青少年向けの戯曲とのことでしたが変に子供に媚びた感じの演出ではなかったのが良かったです。
臍の緒や電話のコードがどこまでも伸びたり、父親が彫刻家になったことを人の背中に刺青を彫ることで表現したりといったナンセンスな表現が楽しかったです。終盤にセットの壁越しに見える、多くの動物達の絵が美しく、ノアの方舟を想起させて印象的でした。