テノヒラサイズの飴と鞭と罪と罰 公演情報 テノヒラサイズ「テノヒラサイズの飴と鞭と罪と罰」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    行け, X10!
    そのポリシーとも言うべき、“きっかり90分、全員つなぎを着て舞台にはパイプ椅子だけ、
    美術や音響、照明に頼らない“という劇団の姿勢に興味津々で出かけた。
    今回は小道具が増えていつもとは少し違った面を見せたということだそうだが
    関西風のノリで押してくるのかと思いきや、品のある笑いでびっくりした。

    ネタバレBOX

    富士山に地熱発電所を造るという国家プロジェクトのため
    複数の企業の担当者が山頂本部に滞在して半年。
    空気も薄いが、ライバル企業をけん制しつつ単身赴任の孤独と闘う厳しい現場だ。
    密かに手を組まないかと談合を持ちかける企業もいるし
    人間関係も煮詰まりがちで、個人的にせこい嫌がらせを繰り返したり
    必要以上に親切な人間にイライラが爆発し、皆で吊るし上げたりしている。

    そんなとき富士山に噴火の兆しが現れ、地震のような揺れが頻発、
    エレベーターの中に作業員が閉じ込められてしまった。
    プロジェクトの中止という最悪の局面に直面する中
    メンバ―たちは企業人として、また一開発者としての
    生き方を問い直される・・・。

    横長のテーブルにパイプ椅子、後ろには壁のように積まれた段ボール箱。
    テーブルの上にある大きな富士山の模型の他にはセットも無い。
    富士山頂でのプロジェクトXみたいなシチュエーションがまず面白かった。
    限られた空間でスケールの大きい話を想像させる。

    一人ひとりのキャラにもう少し情報があれば、もっと面白いと思う。
    例えば“父親が塀の中と外を行ったり来たりしている”シード工業(田中美甫)のような
    バックグラウンドがコンパクトに紹介されたら
    この日本一高いところで闘う者たちの気概みたいなものが感じられて
    各自の行動に説得力が増すように思う。

    関西風にもっと笑いを取りに来るかと思っていたがきっちり演技して揺れたりしない。
    ならば尚更過酷な現実の中で闘うプロジェクトXの企業人と
    心の中のファンタジーワールドとのギャップが大きい方が面白い。

    ミツカネ産業(湯浅崇)の振れの大きい芝居が面白かった。
    頭髪ネタは必然か(笑)
    現実からファンタジーへの転換を牽引している。

    大同電力(松木賢三)のホロリとさせるラストも良かった。
    なんだこの人、いい人じゃんみたいな。
    企業人と情で動く人との両面を丁寧に見せていた。

    関西弁でもなく、ある意味とても洗練された劇団だと思う。
    アフタートークで役者陣が語ったように、
    大阪の“いつものを待ってる”お客さんとはいろんな点で違っただろうけれど
    次はパイプ椅子だけの“超シンプル”なのも観てみたいと思わせる舞台だった。

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    2012/11/07 07:49

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