東京バンビ 最後の公演 !? 公演情報 元東京バンビ「東京バンビ 最後の公演 !?」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ”詰めの甘さを情で補う”個性全開
    劇団の作・演出の稲葉氏が失踪(?)して窮地に追い込まれての公演。
    一体どーしたのよ的な興味も手伝ってか、雨になった平日の夜、劇場は満席となった。
    別に解散することないんじゃないの?と思ったのは私だけか?

    ネタバレBOX

    冒頭シリアルキラーの女(赤崎貴子)がナイフを持って男に襲いかかるところから始まる。
    ふとしたことからその女と結婚したはやし(はやし大輔)は、1年経っても
    挙動不審なほど幸せいっぱい、勝手にしろってほどデレデレしている。
    ある日彼は自宅に地下室があることを発見、そこに見知らぬ男(アダチヒロキ)が監禁されていることを知る。
    妻がシリアルキラーであると言われも尚認めたくないはやし、
    しかしついに妻がナイフを手にしながら「私を止めて!」と叫ぶのを目の当たりにする。
    これが劇中東京バンビが上演しようとしている作品のストーリーである。

    “シリアルキラー妻”の話がフィクションなら、一方は“リアルバンビ”のノンフィクション。
    台本が進まなくて苦しむアダチや、
    途中不安になったキャストが降りると言うのを説得しながらの稽古風景が描かれる。
    そしてようやくシリアルキラーの台本は完成したが、ひどい演出に出演者が全員降板、
    本番前日ついにアダチは一人ぽっちになってしまう。
    ひとりで複数の役を演じながら途方に暮れていると、
    そこへ戻ってきたのははやしだった・・・。

    東京バンビの持ち味は、“詰めの甘さを情で補う”ところだ。
    もう少し突き詰めればきれいに完結するかも、というところで
    「まあ、しょうがないじゃん」「そんなこと言わずにそこを何とか」
    と情に訴える(時に土下座をする)。
    それは演劇論的にイマイチなのかもしれないけれど
    人の弱さやダメさ加減、何よりそういう連中を放っておけない人々の気持ちが
    にわかに現実味を帯びて来る。
    アダチが「観に来てくれよ、ブースに席作るから」と電話をかけていた
    あの相手は稲葉氏だろうと思う。
    こういう所も“情で動く”バンビらしさの現われだ。

    リアルバンビの稽古風景がどこまで事実なのかは解らない。
    しかし、稽古途中で「アダチまでもがバックレたか」と全員蒼白になった時の
    はやしのふりしぼるような叫び。
    そしてラスト、戻ってきたはやしと台詞を叫ぶアダチの泣き笑い。
    二人ともマジで泣いてたから、こちらもマジで泣けて仕方がなかった。
    このふたりぽっちの絆こそ究極の“情で動く”バンビの個性だと思う。
    この”最後感”の醸し出し方、結構上手いし
    ネタとしてなら逆にしたたかさが頼もしい。

    稽古風景のナンセンスはとても可笑しかったし
    客演のはじけっぷりも楽しかった。
    加藤美佐江さん、整った顔立ちで美人なのにあの壊れっぷりは素晴らしい。
    客席の反応は”最後だから”というご祝儀だけではなかったと思う。
    東京バンビ、再結成を待ってるぜ!

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    2012/10/18 02:08

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