おもいだしたこと…
この舞台を拝見して、あることを思いだしていた…
どれくらいまえだったろうか、テレビのあるドキュメントだった。ボクシング・ライト級タイトルマッチ、畑山さんと坂本さんを追った番組だった。試合の前のある日、畑山さんは野外でのインタビューで淡々と、こう語っていた…『ボクにはパンチがないんですよ…ボクはあごがよわいんですよ…だからボクが勝つんですよ』…一瞬、耳を疑った。けしておごりではなく、静かな笑顔を浮かべながら淡々とこたえていた。
一方の坂本さんも、畑山さんの試合のビデオをみながら、『俺のパンチはこれよりあるよ…』、そう、チャンピオンとの戦いに自信をみなぎらせていた。坂本さんも、けしておごってはいなかった。畑山さんは前の試合で勝った直後のリング上から、『次は坂本選手とやります』…観客とカメラの前で、リングサイドで観ていた坂本さんを逆指名した。
坂本さんはある孤児院の出身で、畑山戦での勝利は、その孤児院の子どもたちに約束したものだった。畑山さんは世界王者の責任を、坂本さんもまた、孤児院の子どもたちとの約束を、ともに背負ってたたかった。
孤児院の子たちの応援のすがたは、テレビに撮影されていた…つぶらな、すきとおるひとみたちが見守るなか、壮絶な打ち合いの末、坂本さんがリングに沈む…
勝利した畑山さんの控え室を、元トレーナーが訪れる…『勝ちつづけろ…』そのことばに、畑山さんはとても哀しそうにこたえた…『もうやりたくないよ…』。
インタビューでも、『もう、、目指すものがない…負けるだけだもん。あとは…』…たしか、そうおっしゃっていたと記憶している。
試合場をあとにしようとする畑山さんに、記者がきいた…「『ボクにはパンチがないんですよ…そしてボクはあごがよわいんですよ…だからボクが勝つんですよ』っておっしゃってましたね。あれ、どういう意味だったんですか?」
畑山さんはたちどまって、こたえた…『ボクにはパンチがないんですよ…だから手数で勝負する。相手の打ち終わり際に、パンチを打ち込む…坂本さんはパンチがある。だから勢い、ワイルドになる。ボクはあごがよわい…だからガードもしっかりする。坂本さんはあごが強い。多少打たれてもいいと前にでてくる。だんだんきいてくる…倒れる』
鳥肌がたった。
最後に記者がたずねた…『今日のけんかはいいけんかでしたか?』
畑山さんはしばらく間を置いて、静かな笑顔でこたえた…『ええ、最高に楽しかったです』…その後しばらくして、世界戦に敗れた畑山さんは、引退した…
光希さんの舞台、はじめて拝見しました。
たつみさんはじめ、みなさん、一生懸命舞台を創られているのは感じました。土曜のマチネでしたが、残念ながらやや空席が目立ったように思います。客層は年輩の方々が多く、男女半々。観劇通の方々が多いとおみうけしました。是々非々はありませんが、この客席のすがたにはある理由があるように感じました。私も同世代の知人を誘うには正直迷う舞台でした。それは、おそらく本の世界にあると思います。もうしばらく皆さまの舞台の余韻をかみしめて考えてみたいと思います。お誘いいただいた方のご縁で御席をとっていただいた劇団員の方に直接お礼を申し上げられず恐縮です。ありがとうございました。次作もたのしみにしています。
2013/05/24 00:50
2013/05/23 21:31
2013/05/23 10:34
まさにそれなのです!
観た人が、もしうちの芝居を気に入ってくださったら、次回に友人を誘って連れてきてくれて…
そうして、お客様は増えていくのです。
うちの劇団も最初はそうでした。
ぶれてはいけないのですね!
そうして、いれば、自然と芝居は根付いていくものなのかもしれません。
ありがとうございました!
今度は、ぜひ、直接会って、お話をうかがわせて下さいね!
森下知香