満足度★★★
音楽とスポーツ
リニューアルした東京芸術劇場のオープニング公演で、エンターテインメント性がありつつシリアスなテーマが浮かび上がる作品でした。
東京芸術劇場の改修工事現場で寺山修司の未発表戯曲の原稿が発見されるところから始まり、その戯曲を劇中劇的に上演するという形で進行し、次第に時代や場所、そして「エッグ」という競技の由来が明らかになるという凝った構成の物語でした。
現在と史実とフィクションを巧みに組み合わせ、負の歴史を記録から抹消して、無かったことにしてしまってはいけないというメッセージが表現されていました。
ロッカーとカーテンを用いたトリッキーでスピーディーな場面転換が楽しかったのですが、使い方のバリエーションが少なく、2時間ちょっとの上演時間中にその手法に飽きてしまいました。
ロック歌手役を演じた深津絵里さんが椎名林檎さんによる曲を何曲か歌い(口パクのもありましたが)楽しめましたが、音楽やスポーツをモチーフに扱うということから期待していた、熱狂する集団の怖さがあまり描かれていなかったので、音楽にまつわるエピソードにあまり必然性が感じられず、歌うシーンが浮いて見えました。
脚本、演出、役者ともクオリティーが高いのに、何故かグッと引き付けるような魅力があまり感じられず残念でした。