満足度★★★★
脆さ・強さが愛しい
1930年代の神戸。
3日後に迫る出航を前にした、海外移民収容所の、ある一室の話。
移民の条件は「家族」であること。
そして、移民に希望を見出だす人々は、しばしば偽装家族を作ったとか。
そんな中、この舞台が焦点を当てるのは、
母・娘・息子・父
この構成の、やはり偽装家族。
そして、雰囲気が重い。
空気が、重い。
物語が進むにつれ明らかになってくる、それぞれのどん詰まり感。
移民先に希望を持って!
というよりは、
現状がどん詰まり過ぎて、日本を出ていくしかない、
って空気感。
この抑圧感・緊張感が印象に残った。
舞台の空気感が、そのまま客席も飲み込む力を放ってて、いい感じでした。
映画的な演劇ってあまり好きじゃないのだけど、
この『非家族』は映画的かつ演劇的、みたいなとこがあって、すげぇ、と。
照明の変化や微かな物音に、いちいち集中してしまう。
長い長い間と、人物の行動を、固唾を飲んで見守ってしまう。
すごく繊細な時間を、舞台と共有する感じ、ワクワクした。
「偽装家族」から
「家族」へ。
いろんな言葉ぶつけあって、
汚い部分を見せあって、
どん詰まりからさらにどん底に落ちていってから、
しっかり立ち上がる。
そんな人間の、家族の強さ・脆さを見せつけられました。