浮標(ぶい) 公演情報 葛河思潮社「浮標(ぶい)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    えっ、
    いい人たちばっかり…。

    ネタバレBOX

    大家さんは本業が大変で店じまいしようかというくらいなのですが、厳しい取り立てもしない優しい人。高利貸しも友人で優しく、滞納家賃の一部を追加で貸してくれるほどの好人物。4時間のお芝居で彼らはこのシーンだけ、もう一回ぐらい取り立てシーンがあって、生活の厳しさが表現されても良かったのではないかと思いました。

    義理のお母さんも妻美緒名義の不動産を妻の弟の名義に変えさせようとする嫌な人かと思っていましたが、事情を聞くと、要するに父親だかが賭け事か何かで不動産を勝手に処分して金に変えるだらしない男であったため、家の財産が無くなってしまうのを防ぐために緊急避難的に長女名義に変えたということですから、不治の病で死期が迫りつつあるから死ぬ前にということはあったとしても、家督相続の時代です、就職も決まってこれから家を背負って立とうとする長男の名義に変えることは至極当然なことで、何の問題もないと思いました。

    むしろ、母親が娘の病気を心から心配していると、周りの人たちが何度も念を押して、性格付けをフォローしていること自体が不思議でした。

    身の回りを世話してくれている小母さんは生まれ変わることを信じていて、美緒が先に死ぬことを念頭に置いての発言ではありますが、今度私が生まれ変わったら面倒見てねと、一つの癒しの言葉を掛けていました。

    夫五郎は、万葉人の今を生きる心情に倣い、毎日の生活を楽しんだり、素直に恋愛したり、この世で精一杯生き抜くことが大事だと考え、美緒にも諭します。戦争で戦うことがこの世で一番の生き方だみたいな脱線もありましたが、時代背景を考えるとそんなものかで、ただ、生まれて大きくなって赤ちゃんを産んで、また赤ちゃんが大きくなってなどと言っていましたから、本音では戦争に行くことが人生の目標とは考えていないのだとは思いました。

    不治の病と知ってから絵を描く意欲の失くなった五郎です。結果、絵本の挿絵の仕事が無くなるなど唯一の不安材料はありますが、紙芝居でも何でも描くと言っていました。美緒命でしたが、頑張っていけるでしょう。

    確かに海岸のシーンはありましたが、大きな箱庭療法の砂の入った箱の中でのお芝居は生活感がなく、ままごと遊びのようでした。両脇に役者を置いておいて、出番の少ない役者を顔見せさせるサービスもありました。

    基本いい人たちばっかりで拍子抜けの感はありましたが、4時間飽きずに観ることができました。

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    2012/09/28 11:17

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