ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。 公演情報 マームとジプシー「ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    あやふやな記憶
    色々と突っ込みどころはあるだろうし、あの繰り返しの手法を嫌いな人は嫌いだとも思う。でも演劇初心者としては「こういうのもあるんだなー」と思ったし、描かれようとしているものの(この時代における)普遍さは、数多の(目的を忘れたのではないかと思わせる)その他の演劇よりもリアリティがあった。

    ネタバレBOX

    かつて住んでいた場所、家がまさに取り壊される日の、3兄弟姉妹の感情が繰り返される。繰り返される過程で、徐々に感情の高ぶりが強調されていく。記憶が都合よく整理されていく感じ、思い返すたびに感情が後から補強されていく感じは、実際と近いのではないかと思う。私はいつもそうだ。でっち上げとまではいかないけれど、その瞬間の実態からはどんどんかい離していく感じ。嘘ではないが、本当と言えるかどうかは分からない…。
    登場人物に強制的に与えられる喪失感に対して、勝手に答えが用意される。すなわち、新しい家を作るしかない、というもの(姉→弟)であったり、よくわからないけれど、(何らかの形で)戻れると思う、というもの(旧恋人→妹)であったり。そういう整理のされ方は都合がいいけれど、本当かどうかは分からない。壊される家に対して戸惑うべきなのか。自分は本当に戸惑っているのか。
    いずれにせよ、適当な答えを登場人物は用意する。ところが、観劇後の印象はむしろ、綺麗な答えが用意されなかったように感じる。そしてそのことに対して、たぶん共感するのだと思う。人によっては、苛立つのだと思う。提示された答えにはリアリティは無い。だからといって、ここで描かれたものにリアリティが無いわけではない。喪失し得るものが無いと気付いた時の喪失感は一週回って無色透明、みたいなガッカリ感の中にあって、ちょっとしたイベント(家の取り壊し)に酔ってみることは快感ですらあるかもしれない。
    ちょっとよくわからなくなってきたけれど、そんなことをもやもや考えてしまうくらいには、中味の詰まっているものだったと思う。

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    2012/09/18 23:11

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