エッグ 公演情報 NODA・MAP「エッグ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ふかっちゃんパワフル
    まず新生プレイハウスの空間がとても魅力的。
    鉄板の顔ぶれで挑む思いがけないテーマと、椎名林檎の歌が効果的な舞台。
    仲村トオルの声が良いし、妻夫木聡の明るく真摯なキャラが存分に生きる。
    深津絵里の(歌も含めて)細い体からは想像も出来ないほどの存在感が印象に残った。

    ネタバレBOX

    卵の殻を割らずに白身と黄身を取り出すというほとんど冗談みたいな
    「エッグ」というスポーツに国民は熱狂している。
    オリンピックの正式種目になったら参加するのだと
    リーダー格の円谷(仲村トオル)を中心にチームは日々練習に明け暮れている。
    舞台はチームのロッカールームで、長方形の白いロッカーが並び
    時にはそれがドアになって人々はそこから出入りする。
    この整然と自在に移動するロッカーによる空間の仕切り方が秀逸。

    新入りメンバーのアベ(妻夫木聡)はやる気満々、
    彼は新しい手法でチームに勝利をもたらし一躍花形選手になる。
    アベはチームのオーナー夫妻の娘でシンガーソングライターのいちごいちえ(深津絵里)と政略結婚、
    彼は純粋に妻を愛するが、妻は円谷さんが好きだったのに…と夫を無視する。

    やがてこの時代設定が第二次世界大戦中の満州であることが明らかになってから
    文字通り卵はある方向へと転がり始める。

    スポーツである「エッグ」の技術は細菌兵器に応用され、人体実験へとつながっていく。
    日本の敗戦が決まるとオーナー夫妻によって責任は全てアベに押し付けられ、
    彼は細菌を植えつけられて満州に置き去りにされる。
    そこで初めて「誰からも愛されなかった」夫をひとりに出来ないといちごは駆け戻って来る。
    そして夫の車椅子に寄り添った時、爆撃に遭って夫と運命を共にする──。

    作・演出の野田秀樹の、「誰もやらないからボクがやる」的な挑戦は評価したいと思う。
    前半は野田秀樹自らの劇場改修ネタも含めてコメディタッチ。
    「演劇はおもしろくあるべき」(特別号外インタビューより)というポリシーのせいか
    後半のシリアスな部分の比重が少なくかけ足の印象が否めない。
    暗い歴史である「丸太」の人体実験を扱うのに、ラスト近く雪崩のような描き方で
    オチはしっかり社会問題にしてみました、みたいな感じ。
    演出自体はストレッチャーや白いカーテン、ビニールのような透明シート等を使ったりして
    シリアスな展開にふさわしい緊張感があってとても良かったと思う。

    野田秀樹自身、井上ひさしやつかこうへい、寺山修司の各氏に対する
    オマージュがあると語っているが、(前出のインタビュー)
    井上ひさしならもっと正面からどかんと扱う気がするなぁ。
    遠慮がちにぼかしたり、ささっと足早に通り過ぎる所が
    スタイリッシュに傾いていて、説得力という点では若干弱い印象を受けた。 

    ラスト、孤独なアベの元へ戻って来たいちごの行動にちょっと飛躍があり過ぎて
    もう少しその前から気持ちの変化とか無かったのかなと思った。
    4年間の結婚生活で、一方的に愛され大切にされてきたいちごの心情が
    どこかで動いていたからこそ、ラストあの行動に結びついたのだと言う気がするから。

    難しい椎名林檎の歌を、深津絵里は我儘アイドルのキャラでよく歌ったと思う。
    声も良いし音域も広いが、いかんせん歌が難しくて生歌は気の毒。
    エンディングに流れたのはCDらしいが、それはとても上手かった。
    椎名林檎本人かと思っちゃった。

    奥行きのある舞台を使って出演者みんな手前から奥へよく走り、舞台全体がダイナミック。
    アンサンブルの動きに勢いと力強さがあって爽快感があり、
    後半の満州を追われるスローモーションのシーンでは溜めた動きに心情がこもっていた。
    橋爪功は大好きな役者さんのひとりだが、小悪党みたいな役をやると何とはまるんだろう。
    ひびのこづえさんの衣装もシンプルで美しく、秋山菜津子と深津絵里はとても素敵だった。


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    2012/09/17 09:08

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