ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。 公演情報 マームとジプシー「ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    いつものマームらしいけど、物語の詰めが甘い気も
    「大きな古時計」という歌の「古時計」を「木造家屋」に変えたようなお芝居。チクタクチクタク過ごした日常を台詞とダンスで幾度も繰り返す。そのリズムが観客の記憶に作用し、それぞれの「チクタク」が脳内に立ち上る。

    今回の公演を「自己模倣」と言って批判してたひともいたようだけど、マームはずっと「喪失」それ自身と、喪失という事象により望むと望まざるとに関わらず変化を強いられる人々の姿と記憶を描いていたように思うし、今回の公演もそういう感じがした。

    ネタバレBOX

    ただ、ある日突然行方不明になり、関わった人それぞれに深い影を落としたまま3年が経過した「Kと真夜中~」に比べ、今回は「国道の用地買収により、昔から住んでいた木造家屋が壊される」という、結論のはっきりしている話で、しょうじきそんなに感傷に陥るほどのことでもないような気も。

    思い出深い住み慣れた家を手放すのはそれなりに哀しいのは理解できないこともないけど、借金苦で家を手放さざるを得なかった訳ではないし、住んでいた家屋を含む土地が国道用地買収になれば、土地代及び補償費には税法上の優遇制度もあるし、得た買収費用で新たな生活を始めることができ、一人暮らしのおばあちゃんを老人ホームに入れたり、もしくはデイサービスに通わす資金も出来るわけだから。それはそんなに悪いことではないはず。そのあたり、あの3兄弟の感傷は過剰に過ぎるような気も。

    「国道用地買収」とか、僕のような地方出身者にとってはそんな珍しい話題でもないけど、東京都在住だとあまり身近な話題ではないだろうから、観客の側がどこ出身かで、受け取り方も違うのではないだろうか、と思った。

    あと、細かいことだけど、たかだか一軒家の解体をする程度の作業で土木作業の現場監督が夜中に解体現場を見回りに来ることはまずあり得ない。また自宅を解体している現場に見知らぬ人が勝手に寝ているのを施主(である兄)が発見したら、不審者の不法占拠として警察沙汰になっているハズなので、あのあたりはリアリティがないなぁ、と落胆した。また、次女の彼氏は最後まで次女の兄に「彼氏だ」とは名乗らなかったので、兄からすればただの不審者の男に家に纏わるプライベートな思い出を唐突に語り出すのはかなり無理があるし不自然に思えた。

    感傷を感傷として観客に訴えかけるには、物語のほつれが極力ないように配慮するべきだが、今回はほつれがいくつか露呈し、「ああ、これは所詮物語なのだなぁ」と距離を置いて観てしまった。

    マームの公演は毎回シューゲイザーやエレクトロの曲が効果的に使われる。今回はSTEREOLABの曲が印象的だった。

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    2012/09/16 00:15

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