UndergroundStates 公演情報 EgofiLter「UndergroundStates」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    驚愕のラスト。
    誤解を恐れずに言うなら、そして不遜な物言いであることを承知で言うと「(脚本の)関大輔さんの気持ち、よくわかるわあ」。登場人物に深い愛をおぼえてしまうと、こういう筆の進み方をするだろうな、って。

    『UndergroundStates』の舞台は横浜寿町。でもドヤ街特有の香ばしさはさほど無い。もっとも、この芝居の主題のひとつを語るには、街の香ばしさは必要なく、ドヤが舞台でなくてもよくて・・・この手の話は、そこかしこにあるんだ、今は (かつては京都府・大阪府・東京都某区に色濃く伝わる「伝統」だったわけだけど)。

    それにしても釜にしても山谷にしても、年寄りが多くなったよなあ。労働者の街じゃなくて福祉の街だよ、皮肉じゃなく。そういう意味では、『UndergroundStates』にも登場する「他人の」福祉制度を利用して私腹を肥やさんとする人達にとってドヤ街は、「商売繁盛」のヒントが転がってる宝の街なのかもしれないよね。

    ネタバレBOX

    ゴリゴリのハードボイルドのような冒頭。

    「ヒロインは、こいつらにマワされるんだろうな」という感じの重い空気が劇場を覆う。後ろチョンマゲ(例えが古いが松波健四郎のような髪型)のスーツ男の笑顔、腰の低さが怖い。すごく怖い。この後ろチョンマゲ男を演じるのは、坂中久志さん。いったい他の舞台では、どんな役を演じていらっしゃるのだろうか?追ってみたい役者さんだわ。

    芝居は、冒頭の重い空気をキープしながら進む。

    ドヤ街が、「日雇い労働者の街」から「ドヤ街というシステム」に移行しつつあることを実感させられる。舞台上では、欲望・願い・諦念が渦巻く。ドヤシステムを利用する人間、ドヤでしか生きられない(と思い込んでいる)人間に、横浜市中区職員やケースワーカーが絡む。この人物設定が興味深い。好き勝手に芝居を料理して、観劇後に想像・妄想するのが好きなボクにとっては、想像のネタにあふれる登場人物たちだったなあ。

    こんな雰囲気が中盤の後半(←説明の仕方が下手ダネ)まで続き、どっぷりひたる。
    主役倉田を演じる豊田記央さんに白竜が、ヒロイン香奈枝を演じる まじまあゆみサンに荻野目慶子が憑依したように感じたくらい、どっぷりだった(ま、豊田さんは豊原功補に似ているイケメンだし、荻野目慶子は出てきた瞬間に「コイツが犯人や」な女優だから、まじまサンに荻野目慶子が憑依したというのは間違った観方なんだけどね)。

    そんな『UndergroundStates』の様子がちょっとずつではあるんだけど変わってくるんだ。暖かな空気が流れだす。セリフに対して、場内にほのかな笑いが生じる位、空気が緩みだすんだわ。「あれ?もしかすると良い方向に向くこともあるんじゃない?」って感じ。少なくとも、真綿で首を絞められ続けてるような感じじゃなくなるんだな。

    で、ラスト。

    食堂にかかわる皆、それなりに幸せになっちゃったよ。

    ドヤ街の現実や、生活保護の不正(的)受給、福祉制度に巣食う悪行者、そして何と言ってもこれからの彼女ら彼らの行く末は、なんとなく端に置いといて、みたいな。

    それでイイと思う。このラストは、腐りかけてる現実に背を向けてるわけじゃなくて、脚本の関さんの思いを提示しながらも、観客それぞれに「これから」を考えさせるつくりになってるように思うから。

    それに、ボクがこの脚本を書いていたならば、登場人物に幸せになってもらいたいしね(笑)

    白痴の天使や、精神を病む女、濃すぎる愛情が歪んでしまった男、正義感に燃える男、ヤクザ、ヤクザっぽい男、気のイイおばちゃんetc.と、登場人物はVシネ感が濃かったけど・・・生で観ることで、さらに思いが深まったのは確か。

    それにしても、後ろチョンマゲヤクザ(彼は予想通りヤクザなのだった)。

    組織を守らんとする為だけに、倉田に近づくヤクザ。

    ターゲット外の人間には危害を加えず、目的を遂行する為に善行すら施す&自分の手は絶対に汚さない本物のヤクザ。

    怖いよ。やっぱこの人、怖かったよ。

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    2012/09/16 00:07

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