ルルドの森 公演情報 バンタムクラスステージ「ルルドの森」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    生きている古代信仰
    パイプ椅子と折りたたみテーブル、それに何枚かの布を使っただけのセットで
    取調室からホテルの部屋、凄惨な犯行現場や司法解剖室まで自在に魅せる。
    猟奇的殺人事件の謎解きと、人の心理の不可解さ満載の舞台。
    息もつかせぬ緊張感のうちに事件は起こり、銃声が響き、犯人は笑った・・・。

    ネタバレBOX

    昔中学校の体育館の舞台はこんなだったっけ、と思いながら席に着いた。
    校長先生が卒業証書を渡すようなひときわ高い舞台。
    セットも何もなくて奥にパイプ椅子が見える。

    事件はもう6件起きている。
    いずれも遺体の一部、脳や肝臓などがきれいに持ち去られている猟奇的殺人だ。
    そして7件目が発生する。
    犯人は同一犯なのか、それとも別の人物か・・・。
    事件を追う捜査本部のメンバーたちが関係者に当たるうち
    昔カルト的人気を誇ったテレビ番組「ルルドの森」と
    その主演女優菱見玲子(山本香織)に行きつく。
    捜査官三島(福地教光)と黒船(早川丈二)は知らず知らず
    次第に危険な森へと足を踏み入れて行く──。

    最初から最後まで全く緊張感が途切れることなくストーリーにひき込まれた。
    犯人と思しき人物は一人ではないし、捜査官も含めて登場人物の背景も複雑だ。
    クールなようだが、犯人に対しては自分をコントロール出来ない三島がいい。
    よくある刑事物とは一線を画すキャラクターがとても魅力的だ。
    引退した女優菱見玲子がいかにもそれらしい美しさと貫禄を備え、
    重大な秘密を抱えて悩むギャップが鮮やかだった。

    この劇団はいつもそうらしいが、暗転がなく
    場面転換を全て観客に見せながら行う。
    役者がハケる時に椅子を持って行ったりするのだが
    整然と静かに、黒子になったように、スピーディーで違和感がない。
    セットがほとんど無い舞台をリアルに見せるのは音響の力もあると思う。
    何度かある銃声など完ぺきなタイミングで素晴らしかった。
    もうひとつ、照明による仏壇の表現などに工夫があって
    こういう方法もあるのかと感心した。

    それにしてもこの劇場(?)はちょっと気の毒だと思う。
    下北沢辺り(他をよく知らないので取り敢えず挙げている)の
    コンパクトな小劇場でやったらもっと濃密で張りつめた舞台になると思う。
    そういう所でぜひまた観てみたい作品。
    来年は本拠地を関西から東京に移すと言うバンタムクラスステージ。
    ぜひぜひ東京でがんがんやって欲しい。
    ダークなクライムサスペンス、サイコホラーなど、脚本が大変かもしれないが
    笑いに頼らず無駄のない台詞とテンポの良いストーリー展開は素晴らしい。
    このテイスト、笑いに転びがちな若手の小劇場系劇団とは一味も二味も違う。

    私もキーワードとなった「金枝篇」を読んでみたい。
    そして福地教光さん、素敵でした。
    絶対また観に行きます!

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    2012/09/09 02:04

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  • バンタム代表 細川です。

    精密な分析をありがとうございます!

    何度も読み返してしまいました。


    当方は、舞台上に極力なにも置かずに映画的構図を提示することを作風の主軸としております。

    できるだけ早く、別の作品もお目にかけますよう、努めてまいります。

    今後ともよろしくお願いいたします。






    2012/09/20 21:23

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