満足度★★★★
究極の一人芝居
最近は創作落語で人気が出る噺家が多い中、
役者が古典を選ぶところが面白いし嬉しい。
もはや“役者さんの落語”ではないレベルを堪能。
開口一番の前田一知さんは故桂枝雀師匠の息子さん。
演目「平林」、枕の声が枝雀を彷彿とさせてちょっとびっくりした。
普段はバンド等の活動をしていて落語は“最近趣味で始めた”と言っているが
もはや趣味の域ではないし、古典に向いた声だし、もっと落語をやってほしい。
松永玲子さん(ナイロン100℃)が落研出身とは知らなかったが素晴らしい。
男勝りの女房となよなよしたお妾さんのキャラが、
練り上げた声で見事に対比されて、さすが役者さんの落語。
ラサール石井と小倉久寛の漫才が、この日一番笑いをとったかもしれない。
小倉さんのキャラを存分に生かしたネタで、これは鉄板。
終始自信なさげな彼の言動に大いに笑った。
ラサール石井さんの「つる」、大ウケで拍手が出たのが
言い間違った時だったのはご愛嬌。
トチるとすぐバレるのも古典ならではだろう。
トリは松尾貴史さんの「宿屋の富」。
日頃クールなキャラの松尾さんが、くじが当たって動転する男を演じるのが可笑しい。
全体に一つの演目にかける時間が短く、みんな駆け足なのが残念。
皆さんせっかく稽古するのだから、お座敷芝居なしでゆっくり噺を聴きたいと思った。
落語は究極の一人芝居、時代の空気や人情を写すのに間とテンポは必須だ。
それが役者の豊かな演技力によって再現されるところが魅力なのに
オチに向かって転がるように話すのは勿体無い。
来年は一人一人の噺をもっとたっぷり聴けたらいいなあと思った。