東京裁判 公演情報 パラドックス定数「東京裁判」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    1時間50分をノンストップで疾走していく、いい戯曲と演出で役者が輝く舞台
    演劇好きはもちろん、東京裁判好き(!)ならば、絶対に観たほうがよい舞台。

    今回は再々演だが、前回再演時に観ている。再演を観ているにもかかわらず、今回もエキサイティングな観劇体験ができた。
    次に再々々しても観るんじゃないかと思うほどの傑作舞台。

    ネタバレBOX

    2009年の再演を観ている。
    それを観てパラドックス定数のファンになったと言っていい。
    (http://stage.corich.jp/watch_done_detail.php?watch_id=53259#divulge)

    1度観ているのにもかかわらず、同じ感動、感激があった。

    とにかく台詞がうまい。
    単に台詞の「文章」がうまいということではなく、役者が発する「台詞」としてのうまさがあるのだ。「役者の台詞」となって、言葉が「生きてくる」。生きた、人の言葉となってぐいぐいと伝わる。それぞれの登場人物たちがかかえている気持ちが、ストレートに伝わってくる。
    台詞には、演出が伴ううまさがあると言っていい。もちろん作・演が同一ということもある。また、それに応えられる役者うまさもある。

    役者は1時間50分をノンストップで疾走していく。
    前につんのめったり、足踏みしたり、畳み掛けたり、重ねてみたりと、あらゆるテクニックを使い、スピード感と熱量たっぷりに舞台は進む。

    まさに役者が輝く舞台だったと言っていいだろう。
    口から飛ばす唾だってキラキラ輝いている(笑)。

    前回の自分の感想を見ると上演時間は1時間35分程度だったようだが、今回は1時間50分にバージョンアップしていた。
    記憶になかった台詞があったことから、ちょっとした台詞の追加や演出を変えたことで、さらに作品を濃くしていったようだ。
    前にも増して、各キャラクターが少しくっきりしたような気もする。

    東京裁判における主任弁護人たち5人が主人公。彼らがここにいる理由と、それぞれの想いが、物語が進行するにつれて明らかになっていく。
    それらが、「なるほどそういう理由だったのか」と、ともすれば、何かの答えや、単なる理由なりそうなものを、そうはしなかったところに、この戯曲のうまさがある。
    「東京裁判」というテーマが抱えている、さまざまな問題点や要素を彼らの存在によって、さらにわかりやすく伝えていく。
    それとともに、史実への虚構のプラスの仕方や、例えば、水越の父親の名前がストレートに台詞として出てこなかったりなどの、微妙な塩梅もうまい。

    しかも、裁判における検事側の台詞は舞台上では一切聞こえないという、演劇ならではの仕掛けで、登場人物たちへの、観客のフォーカスがさらに強まるのだ。だから、柳瀬が語る、短いが、強い、彼が体験した広島での語りは、胸に迫ってくるのだ。余計な修飾や描写を排し、シンプルだが強く印象的な台詞だ。

    それと、いちいち裁判用語の説明などしないところもいい。普通だと、法律に詳しくない登場人物がいて(今回も専門家でない登場人物がいたが)、例えば、「罪状認否って何ですか?」みたいな台詞から用語説明をすることが多いだろうが、この舞台ではそれはない。戯曲への信頼と、観客への信頼があるからだろう。そういうもたもたしたやり取りがないから、スピードを感じるのだ。

    登場人物5人のそれぞれのキャラクターがしっかりしており、それが最初から最後まで崩れることはなく、そのキャラクターが台詞1つひとつにしっかりと支えられている。

    行き交うメモや資料類、水差しやコップなどの細かい小道具類もとてもいい。
    微妙に光の雰囲気を変えてくる照明もいい。

    本当に素晴らしい作品だと思う。

    歴史的な事実を知っていることで、この舞台の面白みは倍増するのだが、知らなくても、観劇後、東京裁判では、何が、どう裁かれたのか、を調べてみるのもいいだろう。28人の被告とは誰だったのかや、裁判の結果はどうなったのか、あるいは検事たちにはどのような人がいて、どのような立場であったのか、結局何が問題点だったのか、などをだ。そうすることによって、「ああ、あの台詞はそういうことだったのか」と合点がいくであろう。

    パラドックス定数は、小劇場の劇団にしては、再演が多い劇団ではないかと思う。それは「レパートリー化」を目指しているからではないだろうか。
    何度上演しても劣化しない脚本があり、それを支える役者がいるからこそ、それができるのだろう。
    『東京裁判』は、また上演してほしい作品ではあるが、さらにレパートリー化できる素晴らしい作品をどんどん生み出してほしいと思う。

    話は変わるが、毎回、諸注意のアナウンスを主宰の野木萌葱さんが行う。その都度思うのだが、この方の「男らしい」(失礼・笑)諸注意は素晴らしいと思う。上演中に気分が悪くなったりして外に出る際には、どこにどう通路があり、どこが出口であるかをきちんと説明し、さらに「ここに私がおりますので」と力強く、「だから安心してください」というメッセージを発してくれるのだ。「私がここにいます」というのは、本当に力強いと思う。もしものときにどうしたらよいのかを知るだけでも、観客は安心できる。
    とかく満席の上に、当日券を出し、いざというときの避難通路になる、劇場内の通路さえも潰してしまう劇団が多い中(来た人を帰したくないという気持ちはわかるのだが)、観客の安全を考え、安心させてくれる劇団というのは貴重だと思う。
    そういう姿勢も好きな劇団なのだ。

    ついでに言うと、毎回早めに申込みをすると、オマケがもらえる。いつも公演内容に合わせたちょっとした物だ。今回は、劇中にも登場するチョコレート。真夏に板チョコは厳しいものがあるが(笑)、それでも「楽しんでもらおう」という劇団側の意図はわかる。
    板チョコ1枚であっても、ただというわけではないので、公演の費用がかさむことになり、本当はなくてもいいとは思うのだが、その心意気が好きなので、喜んで頂戴している。
    実際、オマケがなくても早めに申し込みたい劇団になっているのだが。

    あと、チケットや当パンもそれなりに凝っている。チケットは「PM」だし、当パンは「藁半紙」、そしてアンケートは「最終弁論」になっていたし(ただし、アンケートにはいろいろ書いてあったけど、出してしまうので手元には残らないのだが・笑)。こういう遊び心もいいなと思う。

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    2012/08/02 08:20

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