ふすまとぐち 公演情報 劇団野の上「 ふすまとぐち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    何気ないシンプルな話なんだけど・・
    こんなにも音色豊かで、
    悲劇なのだけどそれをさほど感じさせず、
    救いようもないようでいて少しほっとする舞台に仕上げるのは
    やっぱり素晴らしいと思う。

    自分は、舞台の上にそれほど複雑さを求めていない。
    盛り上げるためにムリに絶望的な悲劇を用意する必要性も考えていない。
    ブレヒトのような奇妙な雰囲気は、
    そこへの方向性を持って彼が生まれたもので、
    わざわざ性に合わないのに、
    技術を示すために無理に再現することも正直、空虚だと思う。
    (先人たちのように奇想天外な才人がこの世に生きていたら、
    過去の自分の後追いなどせず、
    その時もっとも勢いのある表現形態で(音楽なり映画なりゲームなり・・
    全く別の表現に(瞬時に)辿り着くのは必然のように自分には思われるのだけれど。
    そういった作品をトレースするのは、
    過去の先人の息吹を感じ、
    新たに奇想天外な舞台を生み出す練習のために行うものだと思う。
    いつまで待っても何の奇想も生み出されないなら、
    何のための上演かと思ったりするのだけれど・・


    人生を描くときにはシンプルで良いと思う。
    日常のそこここに潜んでいる
    何気ない絶望、どこにでもある悲劇を積み重ねていけば
    (その積み重ね方に手腕が表れてくるのだけれど・・
    そしてそれらが物語の中で明確に解決されなくとも、
    ほんのちょっとした光が、
    描かれていれば十分だと思う。

    何のためにその構成があるのか?
    人生の描写のために、そんなに多数の登場人物が必要なのか?
    会話の錯綜はどこを目指して配置されたのか?

    舞台の上に不要なものが配置されることがあまりに多い。

    本来であれば、
    稽古のすべてを舞台の上にのせるのではなくて、
    稽古した会話の中からごく一部を抜粋して舞台の上にのせるのが
    適切であるように思う。

    役者が理解できないものは省き、
    理解できたところだけを演じて欲しいように思う。

    この舞台はシンプルだけど、
    地方の劇団によくあることだけど、
    薄くないし
    (東京の劇団は複雑で技巧的だが、どちらかといえば逆に薄いと思う・・
    現実の悲劇をきっちり描きながら、
    リアルなだけではなく、
    とてもユーモラスに描かれている・・
    (リアルリアルともてはやされているけれども、
    歴史的にみると、リアルより抽象、ユーモア、エスプリのほうが
    文化としては先にあるように思われるのだけれど・・
    そして何より、
    表に出すことが不器用なだけで、
    愛に溢れた一家が描かれているように思う。

    そこがとても素晴らしいと思う。

    地方の劇団は、
    東京に比べて批評する人が極端に少ないだけで、
    空気の色なども含めて
    非常に豊饒な気品を持ち合わせていることが多いように自分は思います。

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    2012/07/15 01:57

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