リ・メンバー 公演情報 ジェットラグ「リ・メンバー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    メリハリの秀逸
    個々のシーンに加えて上演時間をいっぱいに使ったメリハリがしっかりと効いて、ぐいぐいと引き込まれました。

    秀逸なエンタティメントをがっつり味わうことができました。

    ネタバレBOX

    震災の日に予約をしていて(その時も初日だった)、
    公演中止になった作品。
    会場に足を運ぶまでは、いろんな感慨にひたったりもしたのですが、
    舞台が始まるとそんなことは吹っ飛んでしまいました。

    冒頭のバイオリンが開演前の客席の雰囲気を落ち着かせ、
    観客を舞台に引きいれる。
    で、前半そこで展開されるのは、
    恣意的な薄っぺらさとともに組み上げられていく
    ウェルメイドコメディのテイスト。
    肌が粟立つほどにきっちり組み上げられているわけではないのですが、
    綱渡りのなかで物語を破綻させない絶妙な粘り腰があって、
    脚本で組み上げたものに、演出が醸すぶれのないテイストや
    時には役者たちの力技も絡めて
    兎にも角にも、その顛末を見せ切ってしまう。

    そして、後半になると
    まったく異なる質感がすっと立ち上がり
    作品のメインディッシュである前半部分の
    バックヤードの顛末が供されていきます。
    場にはクライムの中にあるテンションが保たれ
    その空気に置かれ、
    前半を操ったものの姿や
    別の視座から眺める
    前半のシーンたちの組み上がりに心を奪われているうちに、
    見え隠れする5年前の出来ごとや
    しっくりと交わらないキャラクターたちから
    垣間見えるものがしなやかに観る側に置かれていく。

    事の成り行きや回収される伏線の一つずつが
    観る側に新たな視野を作り、
    何度も場のシチュエーションを染め変え
    キャラクター達の素顔と距離を浮かび上がらせていきます。
    その一つずつに刹那を力技に頼らない、
    仕組みや役者たちのお芝居の秀逸があって。
    物語が解け新しい視野が生まれるたびに
    目を見開き、得心して、更に目を奪われる・・・。

    観る側が、十分に揺さぶられ満ちた後の
    ドラマのラストシーンは
    突き抜けて美しくパワーがあって。
    冒頭と結んでその舞台を閉じるヴァイオリンの音色が、
    とても深く豊かに感じられ、
    舞台に仕込まれたものの秀逸がすっと心に落ちていきました。

    なんだろ、観終わって、もたれることのない、
    とてもふくよかな満腹感があって。

    まあ、初日ということで、
    前半部分にちょっとワタワタした感じや
    ほんの少しだけ丸まり重なってしまって
    観る側に解けきれなかったしまったロジックの組み上げも
    なかったわけではないのですが、
    これは、きっと、
    ステージを重ねるうちに消滅していくものだと思います。

    役者たちの醸し出す密度には、
    場に対して平板にならない色があって
    ロールの個性もしなやかに残り、
    物語にさらなる膨らみを与えていて。
    様々に仕組まれたメリハリにしなやかに導かれ、
    幾重にも踵を返す終盤の物語の姿にグルーブ感すら生まれて。

    舞台自体の展開の面白さに加えて
    作家と演出家、そして役者たちそれぞれの力量を
    しっかりと感じることが出来た舞台でもありました。

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    2012/07/14 09:25

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