満足度★★★
「正しさ」の不確かさ
裁判員制度を中心に、死刑制度やホームレス、生活保護、差別、テロ、マスコミといった様々な社会問題ネタを扱い、それに悪夢的で不条理なエピソードが絡まる、盛り沢山なブラックコメディーでした。
過去に関係を持った女子生徒を間接的に殺してしまったことに負い目を持ち、また、「林ライス事件」の裁判員として選ばれ、有罪の判決に荷担してしまったことに悩む元教師の住むボロアパートに、他の部屋の住人や大家、生徒の両親、一緒に裁判員をした人達、さらにはホームレス等が訪れて精神的に追い詰められて行く様がコミカルに描かれていました。
虚実ないまぜになって破局を迎える終盤の展開が、何が正しいのかが分からず混乱する現代人の姿を描いているようで印象的でした。
多くの人が立ち代わり入れ替わりでやってくる構成や、ギャグ的なしつこいやりとりや、横にスライドして転換する舞台セット等、典型的な長屋を舞台にした人情喜劇をイメージした形式の中に様々な倫理的な問題を盛り込み、はっきりと結論を出さない終わり方は、観客もそれらの問題と無関係ではないというメッセージが感じられました。
色々と盛り込み過ぎて焦点がボヤけた印象になっていたのが残念でした。不謹慎系の笑いはもっと過激でも良いと思いました。