満足度★★★★★
あのバイオレンス・アクションを白石さんが大迫力で自由自在に表現!ラストの温かさに泣ける。
白石さんのライフワークのごとき、朗読劇シリーズ。
今回初めてその存在を知ったのですが、
まさか大沢在昌の「新宿鮫・毒猿」を演じられるとは驚きです。
ほとんど小説なんか読まない私が、当時、珍しく猛スピードで完読!
小説のラストシーンに泣いた、名作でした。
あれから20年!
その「毒猿」を演じられると聞いて、早速拝見したのですが・・・
素晴らしい!絶句。
シンプルな舞台は、新宿のネオン街や「歌舞伎町」と書かれたアーケードを簡単に書いた書き割りの壁と、黒い壁、椅子が置かれているだけ。
黒のパンツスーツでキメて登場した白石さんは、ホンを片手に渋い声で語りだす。
まだにぎやかだった夜の歌舞伎町の人混み。
風俗店の様子、風俗嬢たちと嫌味な店長、こき使われている不法就労の中国人。
そして事件は動き始める。
新宿署刑事「新宿鮫」鮫島は、凶悪なプロの殺し屋「毒猿」が台湾から潜入していることを知る。
新宿に暗躍する毒猿は、遂に暴走し、未明の新宿御苑は地獄と化す。
新宿、歌舞伎町、新宿御苑は、まさによく行くところばかりなので、臨場感もなおさら。
白石さんは、身振り手振りを交えて、ある時は歩きまわりながら、当然のことながらすべての役を1人でこなす。
若い女性から、ドスの利いた暴力団の幹部、若頭、チンピラ、そして中国人の捜査官、殺し屋…
ラブシーンから、クライマックスの殺し合いの阿鼻叫喚の様まで演じる白石さんの語りに、ただただ引き込まれるばかり。
本当に、すごい表現力です。
そして迎える、ラストシーン。
次々に人は死ぬのに、穏やかで温かい話の結末に、昔、本で読んだ時以来久々に、またしても涙してしまったのでした。