首無し乙女は万事快調と笑ふ! 公演情報 ポップンマッシュルームチキン野郎「首無し乙女は万事快調と笑ふ!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    濃いキャラが特盛り状態のコメディ…ラストは…
    濃く、キツイ笑いを振りまきながらも、ラストが笑いに突き抜けていかないところが、今回設定の時代背景とリンクしていく。

    ネタバレBOX

    ポップンマッシュルームチキン野郎を見ると、モンティパイソンを思い浮かべてしまう。毒があって、悪ふざけが過ぎた感じなどが、だ。
    ただし、基本、対象に対して「情」あるいは「愛」が感じられるのがちょっと違う。

    今回も、第2次世界大戦中のドイツが舞台で、いい感じに悪ふざけが過ぎた感じになっている。
    ナチスの御用科学者になることを自ら選択した博士が、その罪滅ぼしとナチスへの反抗のようなもので、人体実験を繰り替えすというもの。
    例えば、博士は、戦うことを拒否した兵士たちを、戦闘マシーンとして改造してほしいナチスの要求を聞かず、戦いにはまったく使えない、トンデモな身体に改造してしまう。
    また、物語の中心のエマは、博士の彼女(たち)への贖罪の気持ちで、首だけで生かされてしまう。

    そういう姿は、実は笑えない(笑ったけど)。
    人のためによかれとしたことが、実は、良くなってはおらず、例えば、身体にプロペラを付けられたり、お湯が出たりというのは、見た目にも機能的にもいいわけがないのだ。
    戦うことを拒否した兵士たちには、拒否する感性を断絶するような手術をするほうが、その時代に生きる彼らのためになるのかもしれないからだ。

    特に、首だけにされてしまったエマは、一見、博士の善意のように見えるのだが、彼女が生きていくことの原動力は、恋人のことであり、彼がすでにこの世にいないことを一番知っている博士が、実はさらに彼女を辛い目に遭わせていることに、博士は気づいていないのだ。

    「よかれ」「善意」として行っている行為自体が、さらに相手を過酷な状況に追い込んでいく、ということは、それを行うほうに意識されていないとなれば、さらに酷いことになっている。

    そういう(実は)酷い物語が、濃いキャラたちと笑いの中で繰り広げられる。
    ヒトラーの後ろに常に隠れているアンネのような、キッツイ笑いとともに。

    ラストのラストまで、それは続き、博士が垣間見る、酷い目に遭わせた2人の幸せそうな姿は、酷い目に遭わせた博士が、自覚のないまま、自分が自分に対して、勝手に赦しを得た勘違いであり、美しくもなんともない、身勝手な想像にすぎないのだ。

    博士は生き残り、意味もなく殺され、実験動物にされた2人は死んでいく。
    そういう不合理、不条理がまかり通っていた時代だということが、この舞台の内容であり、この時代を選んだ理由でもあろう。
    単なるマッドサイエンティストが、善意の人のように振る舞える狂った世界だったということなのだ。

    そして、どんなに言い繕ったとしても、博士は非道なことをしたナチスの一員であり、それに手を貸したことは間違いなく、何も関係ありませんでした、私は従いませんでした、抵抗したのです、という言い訳は通用しない。

    だから、あのラストには違和感を感じてしまった。いい雰囲気で、あたかもあの世で幸せになる2人の姿を、博士に見せてしまうのだ。
    (単に、そのシーンの見せ方で言えば、すぐ前に星の話をしていたので、2人が星とか、星座とかになったようにしてもよかったのでは?…まあ、そうなったらそうなったで、今書いている主旨とはズレていくのだが)。

    「見せてしまう」のではなく「見てしまう」博士ということで、もちろんラストに博士へ「罰」を与えろ、ということではなく、観客の気持ちに冷水を浴びせることになったとしても、博士の立場や所業について、博士自身に知らしめるものでもよかったのではないかと思うのだ。
    そういう博士の立場などについては、意識していたと思うのだが、きれいにまとめるのではなく、ここでこそキツさを見せてほしかったと思う。

    今回も濃いキャラが乱立していたが、ごちゃごちゃにならず、うまく整理された演出はお見事。ただ、掃除の若い女性は、ラストのあのシーンにちょっと生かされるだけで、それまでのシーンはさほど意味があったように思えず(おばさんのほうのウケとしての存在ぐらい)、もうひとつ何かほしかった。他の人とタイプの違う役者なのでもったいない気がする。ラストのあのシーンは、別の誰がやったとしても、同じぐらい面白かったと思うし。

    キャラの中では、半径1メートル・テレパシー女がツボ。酷いメイク(笑)とテレパシーの表情が面白かった。

    捕虜たちが入れられていた収容所(?)の将校も科学者ということならば、軍服に白衣のほうがよかったのでは? あと、軍服、もうちょっとなんとかならなかったかな、特にヒトラーとか。

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    2012/06/19 05:47

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